保釈許可の裁判に対する抗告の決定に対する特別抗告事件 最高裁判所第三小法廷平成26年(し)第136号 平成26年3月25日決定

       主   文

原決定を取り消す。
原々決定に対する抗告を棄却する。

       理   由

 本件抗告の趣意は、憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法433条の抗告理由に当たらない。
 しかし,所論に鑑み,職権により調査する。 
 本件公訴事実の要旨は,「被告人が,平成25年7月及び同年8月の2回にわたり,リゾートマンションの被告人の部屋において,当時21歳及び当時25歳の女性に対し,睡眠導入作用を有する薬物を混入した料理を食べさせ,同薬理作用により抗拒不能の状態に陥らせて姦淫した」というものである。一件記録によれば,被告人には刑訴法89条1号,3号及び4号に該当する事由があると認められる。しかし,被告人は,原々決定までに,本件と併合して審理されている同態様の準強姦又はその未遂被告事件5件(以下「併合事件」という。)を含め,公訴事実を全て認め,検察官請求証拠についても全て同意をして,その取調べが終わっていること,被告人に対する更なる追起訴は今後予定されていないこと,被告人の妻が被告人の身柄を引き受け,公判期日への出頭確保及び日常生活の監督を誓約していること,これまでに前科前歴がないこと等の事情がある。
 以上のような本件事案の性質や証拠関係,併合事件を含む審理経過,被告人の身上等に照らすと,保証金額を合計1500万円とし,本件及び併合事件の被害者らとの接触禁止などの条件を付した上で被告人の保釈を許可した原々決定は,その裁量の範囲を逸脱したものとはいえず,不当ともいえないから,これを取消して保釈請求を却下した原決定には,刑訴法90条の解釈適用を誤った違法があり,これが決定に影響を及ぼし,原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よって,刑訴法411条1号を準用して原決定を取り消し,同法434条,426条2項により更に裁判すると,上記のとおり本件については保釈を許可した原々決定に誤りはないから,それに対する抗告は,同法426条1項により棄却を免れず,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 木内道祥 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春)