傷害致死,殺人,死体遺棄,傷害,逮捕監禁致傷,逮捕監禁,監禁被告事件 最高裁判所第三小法廷平成21年(あ)第994号 平成25年1月29日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人竹内義則,同大塚陵,同谷口琢哉の上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
 付言すると,本件は,(1)多数の者から多額の金員をだまし取るいわゆる架空請求詐欺を行う組織的団体の構成員であった被告人が,平成16年10月13日から同月16日までの間に,〔1〕その構成員であったA,Bほか6名ないし10名と共謀の上,同じく構成員であった被害者4名を逮捕監禁又は監禁し,その際,うち1名にナイフを突き刺して傷害を負わせ,〔2〕A,Bほか7名と共謀の上,うち1名に対し,こもごも殴る蹴るなどした上,熱湯を掛けるなどの暴行を加えて熱傷性ショック等により死亡させ,〔3〕A,Bほか2名と共謀の上,同様に暴行を受けて衰弱していた他の1名に対し,粘着テープを口元や胸部等に巻き付けるなどの暴行を加えて呼吸不全により死亡させ,〔4〕上記〔3〕の4名と共謀の上,残った2名を,それぞれその鼻口部を塞ぐなどして窒息死させて殺害し,〔5〕A,Bほかと共謀の上,被害者4名の死体を土中に遺棄したという傷害致死,殺人,死体遺棄,逮捕監禁致傷,逮捕監禁,監禁,及び(2)平成17年6月の警察署留置場における傷害からなる事案である。
 上記のうち重大な事犯である(1)の犯行についてみると,被告人らは,被害者らが中国人マフィアに被告人らを襲撃させて多額の現金を強奪する計画を立てていると聞いて,被害者らからその計画の内容を聞き出すとともに,制裁を加えるために監禁及び暴行に及んだものである。そして,監禁した被害者4名の処置に困り,被害者らによる報復等を恐れた結果,被害者らを殺害するほかないと話し合い,殺害の実行を暴力団関係者に依頼する交渉をしていた間に,殺害行為に及ぶ前の暴行によって被害者2名を死亡させ,その交渉が失敗に終わったことから,残りの被害者2名の殺害に及んだものである。このような犯行に至る経緯及び動機に酌量すべき事情は認められない。暴行は激しく執ようであった上,殺害行為の態様は,寝袋に入れられ粘着テープにより何重にも緊縛されて身動きの取れない被害者2名の鼻口部を塞ぐなどして窒息死させたもので,冷酷で非情というほかない。死体遺棄は,犯跡を隠蔽するために,暴力団関係者に依頼して高額の報酬を支払い,被害者4名の死体を無造作に土中深くに埋めたものであって,死者に対する畏敬の念のおよそ感じられない犯行である。4名の命が失われた結果は甚だ重大で,遺族らの処罰感情は厳しい。被告人は,Aとともに本件一連の犯行の中核メンバーであり,上記(1)〔1〕においてナイフを突き刺して傷害を負わせるなど被害者らに対し激しい暴行を加え,上記(1)〔2〕においても熱湯を掛けるなどして傷害致死に大きく寄与し,残りの3名の殺害を引受ける者がいない場合には自ら殺害を実行するようBらに指示するなど殺害の謀議において重要な役割を果たし、Aによる指示ともあいまって,上記(1)〔3〕〔4〕の傷害致死や各殺人の実行を決定付け,死体遺棄の事案でも中心的な役割を担い,犯行後,Bらに対し,口止め工作を行うなどしており,被告人が本件において果たした役割は大きい。被告人は,被害者2名に対する殺人への関与を否認するなど,真摯な反省の態度はうかがえず,更生の可能性に乏しい。
 以上のような諸事情に照らすと,被告人の刑事責任は誠に重いというほかなく,殺人や被害者1名の逮捕について共謀を争うほかは事実を認めていることや,実母が被告人の更生に尽力する旨を述べていることなどの被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,被告人の刑事責任は極めて重大であり,無期懲役の第1審判決を破棄して被告人を死刑に処した原判断は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 
 よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官北岡英男,同石原誠二 公判出席
(裁判長裁判官 岡部喜代子 裁判官 田原睦夫 裁判官 大谷剛彦 裁判官 寺田逸郎 裁判官 大橋正春)