傷害致死,殺人,死体遺棄,逮捕監禁致傷,逮捕監禁,監禁被告事件 最高裁判所第一小法廷平成21年(あ)第1602号 平成25年2月28日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人大河内秀明,同大熊裕起,同石田智嗣の上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人本人の上告趣意は,事実誤認,量刑不当の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
 付言すると,本件は,Aを中心としたいわゆる架空請求詐欺を行う組織の構成員であった被告人らが共謀の上,平成16年10月13日から同月16日までの間に,(1)同じ組織の構成員であった被害者4名を逮捕監禁又は監禁し,その際,うち1名に傷害を負わせ,(2)被害者1名に対し,こもごも断続的に殴る蹴るなどした上,熱湯を掛け,覚せい剤を注射するなどの暴行を加えて死亡させ,(3)同様に暴行を受けて衰弱状態にあった被害者1名に対しても,その口元や胸部等に布粘着テープを巻き付けるなどの暴行を加えて死亡させ,(4)残った被害者2名を,それぞれその鼻口部を塞ぐなどして殺害し,(5)被害者4名の死体を土中に遺棄したという事案である。
 被告人らは,被害者4名が中国人マフィアにAらを襲撃させて多額の現金を強奪する計画を立てていたとして,被害者らから襲撃計画の内容を聞き出すとともに,制裁を加えるために監禁等の犯行に及んだものである。そして,監禁した被害者4名の処置に困り,被害者らによる報復等を恐れた結果,被害者らを殺害するほかないと話合い,殺害の実行を暴力団関係者に依頼する交渉をしている間に,殺害行為に及ぶ前の暴行により被害者2名を死亡させ,その後交渉が失敗に終わったことから,残り2名の殺害に及んだものであって,このような犯行に至る経緯及び動機に酌量すべき事情は認められない。殺害行為の態様も,緊縛されて身動きの取れない状態の被害者らの鼻口部を塞ぐなどして窒息死させたもので,冷酷で残忍というほかない。さらに,犯跡を隠蔽するために,暴力団関係者に高額の報酬を支払い,被害者4名の死体を深く掘った土中に埋めさせたものであって,死者に対する畏敬の念のおよそ感じられない犯行である。被告人は,監禁等の事案において被害者らに暴行を加えるなど積極的に加担したのみならず,殺人の事案においては,(2)及び(3)の被害者らの死亡を目の当たりにしながら,(4)の被害者らの鼻口部を塞ぐという殺害行為の中核部分を自ら進んで実行しているのであって、被告人が各犯行において果たした役割は大きく,人命軽視の態度も顕著である。4名の命が奪われたという結果は甚だ重大で,遺族らの処罰感情は厳しい。
 以上のような諸事情に照らすと,被告人は,被害者らの逮捕監禁の際に激しい暴行を加えた共犯者やその上位者の立場にあるAを恐れてその指示に従って殺害行為を実行した面も否定できず,両名との関係では従属的な立場にあったこと,前科がなく,事実関係はおおむね認めて反省の態度を示していることなど,酌むべき事情を十分考慮しても,その刑事責任は極めて重大であり,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 
 よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官北岡英男,同佐藤孝明 公判出席
(裁判長裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝 裁判官 白木勇 裁判官 山浦善樹)