再審請求棄却決定に対する抗告棄却決定に対する特別抗告及び許可抗告事件 最高裁判所第一小法廷平成25年(ク)第1158号,平成25年(許)第35号 平成26年7月10日決定

       主   文

原決定を破棄し,原々決定を取り消す。
本件再審の訴えを却下する。
手続の総費用は抗告人の負担とする。

       理   由

1 本件は,相手方Y1,同Y2及び同Y3(以下「相手方Y1ら」と総称する。)を原告とし,相手方Y4(以下「相手方会社」という。)を被告として提起された株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決につき,相手方会社の株主である抗告人が,上記訴えに係る訴訟の係属を知らされずその審理に関与する機会を奪われたから,上記確定判決につき民訴法338条1項3号の再審事由があるなどと主張して,上記訴訟について独立当事者参加の申出をするとともに,再審の訴えを提起した事案である。
2 原々審は,株式会社の解散は当該株式会社の株主に重大な影響を及ぼす事項であるから,株式会社の解散の訴えが提起される前から当該株式会社の株主である抗告人は,上記訴えに係る請求を認容する確定判決を取り消す固有の利益を有する第三者に当たり,上記確定判決につき再審の訴えの原告適格を有するというべきであると判断した上で,本件再審請求には理由がないとしてこれを棄却した。原審は,この原々決定を維持して,抗告人の抗告を棄却した。
3 そこで,職権により本件再審の訴えの適否について検討する。
 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる(最高裁平成24年(許)第43号同25年11月21日第一小法廷決定・民集67巻8号1686頁参照)。この理は,新株発行の無効の訴えと同様にその請求を認容する確定判決が第三者に対してもその効力を有する株式会社の解散の訴えの場合においても異ならないというべきである。
 そして,独立当事者参加の申出は,参加人が参加を申し出た訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず,単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されないと解すべきである(最高裁昭和42年(オ)第867号同45年1月22日第一小法廷判決・民集24巻1号1頁参照)。
 これを本件についてみると,抗告人は,相手方Y1らと相手方会社との間の訴訟について独立当事者参加の申出をするとともに本件再審の訴えを提起したが,相手方Y1らの相手方会社に対する請求に対して請求棄却の判決を求めただけであって,相手方Y1ら又は相手方会社に対し何らの請求も提出していないことは記録上明らかである。そうすると,抗告人の上記独立当事者参加の申出は不適法である。なお,記録によれば,再審訴状の「再審の理由」欄には,相手方会社との関係で解散の事由が存在しないことの確認を求める旨の記載があることが認められる。しかし,仮に抗告人が上記独立当事者参加の申出につきこのような確認の請求を提出していたと解したとしても,このような事実の確認を求める訴えは確認の利益を欠くものというべきであって,上記独立当事者参加の申出が不適法であることに変わりはない。
 したがって,抗告人が本件再審の訴えの原告適格を有しているということはできず,本件再審の訴えは不適法であるというべきである。
4 以上によれば,本件再審の訴えを適法なものであるとした原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原決定は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,原々決定を取消して,本件再審の訴えを却下すべきである。
 よって,裁判官山浦善樹の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官金築誠志の意見がある。

 裁判官金築誠志の意見は,次のとおりである。

 株式会社の解散の訴えに対して反対の立場に立つ株主は,その訴えの原告と会社がなれ合い訴訟をするおそれがあると考える場合,訴えの却下又は請求棄却を求めて被告側にいわゆる共同訴訟的補助参加をすることにより,その立場を守ることができるから,あえて独立当事者参加(いわゆる詐害防止参加)をする必要はない。しかし,株式会社を解散する判決(以下「解散判決」という。)が確定した後に,その事実を知った株主が,株式会社の解散の訴えに係る訴訟(以下「解散訴訟」という。)の係属を知らされなかったためにその審理に関与する機会が不当に奪われたことを理由として(すなわち,多数意見が引用する平成25年11月21日第一小法廷決定が,確定判決の効力を受ける第三者に対し,手続保障の観点から認めた民訴法338条1項3号の再審事由を主張して),再審の訴えを提起したいと考えた場合は,共同訴訟的補助参加という方法は有効とはいえない。補助参加の申出と共に再審の訴えを提起した場合に主張し得る再審事由は,補助参加の性質上,参加の対象である訴訟の当事者が主張し得る再審事由に限られ,上記のような自己固有の再審事由を主張することはできないと解されるからである。解散判決の効力を受ける株主が上記のような再審事由を主張して再審の訴えを提起しようと思えば,独立当事者参加の方法を採るほかはない。
 そこで,適法に独立当事者参加の申出を行うためには,自らの請求を定立しなければならないかどうかであるが,この点については,請求の定立を不要とし,訴えの却下又は請求棄却を求めるだけで足りるとする見解も,学説上有力に主張されている。私も,詐害防止参加に関する限り,常に請求の定立が必要であるとまで解しなければならないか,若干の疑問を持つ。適切な請求を定立することが困難である一方,訴えの却下又は請求棄却の裁判を得るだけで,詐害訴訟防止の目的を達成し得るという場合は十分想定し得るが,請求を定立しない独立当事者参加を許容することによって,何らかの具体的な弊害が生ずることが一般的に予想されるのかどうか,明らかではないように思われる。また,独自の請求を定立する可能性のない第三者に,補助参加人の地位を超える民訴法40条1項から3項までの規定に基づく牽制権限を与えることの当否も問題にはなろうが,請求を定立しない共同訴訟的補助参加に同様の権限を認めていることからすれば,独自の請求があることが,必然的に上記牽制権限付与の当否に結び付くものではないと考えられる。独立当事者参加について,判例上いわゆる三面訴訟説が採られていた時代には,請求の定立を不要とすることは理論上難しかったかもしれないが,現行民訴法が当事者の一方だけを相手方とする独立当事者参加も許容している現在,この点を柔軟に考える余地が生じているのではあるまいか。
 ただ,詐害防止参加は補助参加と区別された当事者としての参加であり,訴えの却下又は請求棄却を求めて独立当事者参加をする場合,いわば被告の地位を併存的に引き受けたような形になるのであるから,原告の請求について被告となり得る者であることは必要と考えるべきであろう。この観点から本件を見ると,会社法834条20号は,株式会社の解散の訴えの被告適格を当該株式会社と法定しており,株主は上記訴えの被告適格を有しないから,株主が,単に訴えの却下又は請求棄却を求めて,被告の立場で解散訴訟に独立当事者参加の申出をすることはできないと解さざるを得ない。したがって,独立当事者参加の申出と共に,解散判決に対する再審の訴えを提起する場合も,単に訴えの却下又は請求棄却を求めることでは足りず,再審の訴えの対象である解散訴訟の当事者の少なくとも一方に対する請求を定立しなければならないと解すべきである(ちなみに,多数意見の引用する昭和45年1月22日第一小法廷判決も,本件と同様,株主総会決議の効力等を争ういわゆる会社訴訟で,株主たる独立当事者参加申出人には,被告適格がなかった事案のようである。なお,前掲平成25年11月21日第一小法廷決定は,再審の訴えの対象になったのが新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決であって,上記訴えの被告適格が株式を発行した株式会社と法定されている点は本件と同様であるが,株式の発行により株主となったことを主張する再審原告が,当該株式会社や上記訴えを提起した原告に対し株主権確認の請求を定立できる場合で,かつ,現にかかる請求を提出して独立当事者参加の申出をするとともに再審の訴えを提起した点で本件と異なる。ここに,上記決定と本件における再審原告の確定判決に対する法的利益状況の違いが,反映されているように思われる。新株発行の無効の訴えの被告たる株式会社は,株式の発行主体として,当該株式の株主に代わって手続に関与する立場にもあるが,株式会社の解散の訴えの被告たる株式会社は,そうした立場にあるわけではないことも指摘できよう。)。ところが,抗告人は,相手方Y1らの相手方会社に対する請求に対して請求棄却の判決を求めただけで,これら解散訴訟の当事者に対する請求を提出していない(仮に抗告人が独立当事者参加の申出につき解散事由が存在しないことの確認を求める訴えを提起していたとみるとしても,そのような訴えが,確認の利益を欠くことは,多数意見の指摘するとおりである。)から,抗告人の独立当事者参加の申出は不適法であるといわざるを得ない。この結論は,請求を定立しない詐害防止参加を認める余地がないかどうかの議論にかかわりなく,会社法が解散の訴えの被告適格を会社に限定したという立法政策の結果として,やむを得ないもののように思われる。

 裁判官山浦善樹の反対意見は,次のとおりである。

1 はじめに
 私は,多数意見と異なり,抗告人が,相手方Y1らを原告とし,相手方会社を被告として提起された株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有しており,本件再審の訴えは適法であると考える。そして,上記確定判決には民訴法338条1項3号の再審事由があるとみる余地があるというべきであるから,原決定を破棄して,本件を原審に差し戻すのが相当であると考える。以下において,その理由を述べる。
2 再審の訴えの原告適格(独立当事者参加の申出における請求の定立の要否)
 記録によれば,抗告人は,再審訴状において,自身を「参加人兼再審原告」と,相手方Y1ら及び相手方会社をいずれも「被参加人兼再審被告」と表示した上で,「上記訴訟に参加するとともに,再審の訴えを提起する」などと主張しており,本件再審の訴えと共に独立当事者参加の申出をしていることは明らかである。この独立当事者参加の申出が,いわゆる詐害防止参加を求めるものであることもまた明らかである。
 多数意見は,引用する昭和45年1月22日第一小法廷判決を踏襲して,詐害防止参加である本件独立当事者参加の申出においても,請求の定立が必要であると解している。
 しかし,私は,少なくとも詐害防止参加を求めるに当たり,請求を定立することは必要でないと解するのが相当であると考える。その理由は,次のとおりである。
 詐害防止参加は,原告と被告によるなれ合い訴訟により参加申出をしようとする者の権利を害する判決が出ることを阻止することに目的がある。そのため,参加申出をしようとする者は,原告の被告に対する請求を棄却する判決を得れば十分であって,それ以上に自己の請求についての判決を求めているわけではない。このような場合に,原告又は被告に対して請求を定立することを要求するのは,参加申出をしようとする者に不可能を強いることになりかねない。殊に本件においては,抗告人と相手方Y1らとの間に,相手方Y1らが保有する相手方会社の株式の数に争いがないから,抗告人が相手方Y1らに対して,相手方会社の株式について株主権確認の訴えを提起して相手方Y1らの保有株式数(株式会社解散の訴えにおける原告適格)を争うことは想定できない。また,相手方会社に対しては,再審訴状に解散事由が存在しないことの確認を求める旨の記載があることから,このような確認の請求を定立していたとみることができるが,多数意見が指摘するように,このような確認を求める訴えに確認の利益を認めることは困難である。相手方会社が解散していないことを前提に特定の取締役の地位存在確認の訴えを提起したり,相手方会社の解散を命ずる判決の確定を前提としてされた清算人の選任手続の無効を主張して清算人の地位不存在確認の訴えを提起したりすることも考えられないではないが,このような技巧的な請求を定立しなければならないのであろうか。
 また,大正15年法律第61号による旧民訴法の改正によって独立当事者参加の規定が新設された立法経過を見ると,独立当事者参加において必要的共同訴訟の規定を準用することとされたのは,原告の請求と参加人の請求とについて矛盾のない判決をすることよりも,参加人に独立した訴訟上の地位を充てることに重点が置かれてきたことがうかがわれる(徳田和幸「独立当事者参加における請求の定立について-詐害防止参加の沿革を中心として-」「新堂幸司先生古稀祝賀民事訴訟法理論の新たな構築上巻」705頁以下参照)。
 そうすると,詐害防止参加については,当事者となり一定の権限を行使することができることで必要にして十分であり,無理に請求を定立させる必要はないというべきである。
 かつて独立当事者参加は,訴えの提起の実質を有するから,参加人は本案訴訟の当事者双方に対して自己の請求を立てて参加するものであると理解されており,前掲昭和45年1月22日第一小法廷判決もそのような考えに依拠したものであるが,現行の民訴法においては,当事者の一方のみを相手方とする独立当事者参加の申出が認められており,その前提が異なっているのであるから,少なくとも詐害防止参加については,上記のような考えを捨てるべきである。
 なお,金築裁判官の意見は,詐害防止参加において常に請求の定立を要するとする多数意見に疑問を呈しつつ,本件においては,会社法834条20号が株式会社の解散の訴えの被告適格を当該株式会社に限定するという立法政策を採用している以上,株主が,単に訴えの却下又は請求棄却を求めて被告の立場で解散訴訟に独立当事者参加の申出をすることはできず,独立当事者参加の申出と共に解散判決に対する再審の訴えを提起する場合も,解散訴訟の当事者の少なくとも一方に対する請求を定立しなければならないとする。
 しかし,記録上,相手方会社の解散を希望する株主が発行済株式の過半数を保有し,その一部を保有する相手方Y1らが相手方会社の解散を求める訴えを提起したことがうかがわれる本件においては,会社法834条20号を介在させて詐害防止参加に当たり請求の定立を必要とするのは相当でない。すなわち,同号が株式会社の解散の訴えの被告適格を当該株式会社に限定したにもかかわらず,同法838条がその訴えに係る請求を認容する確定判決の効力が株主を含む第三者に対しても及ぶとしたのは,会社をめぐる法律関係の画一的処理を図る必要性がある一方,通常の場合いわゆる少数株主権の行使として提起される株式会社の解散の訴えに係る訴訟においては,訴訟の結果に最も密接な利害関係を有する当該株式会社が最も充実した訴訟活動をすることが期待できる上,当該株式会社の解散に反対する多数派株主が,当該株式会社の意思決定に関与するなどして,実質的に当該訴訟に関与することができ,株主に対する手続保障も確保されているということができるからであると考えられる。しかるに,本件のように,株式会社の解散に賛成する株主が多数を占め(ただし,解散の決議をすることができるほどには至っていない。),その一部又は全部が当該株式会社に対して株式会社の解散の訴えを提起する場合,当該株式会社の解散に反対する少数派株主に当該訴え提起の事実さえ知らされないままなれ合いで当該訴訟が追行されることにより,少数派株主に対する実質的な手続保障に欠ける事態が生ずるおそれが極めて大きく(本件再審の訴えの対象となっている前訴では,後記3のとおり,実際にそのような事態が生じていることがうかがわれる。),このような事態は会社法の予定しないところであると考えられる。
 以上によれば,抗告人は請求の定立をしなくても適法に独立当事者参加の申出をすることができ,その結果,本件再審の訴えの原告適格を有することとなるから,本件再審の訴えは適法というべきである。
3 本件においては再審事由を認める余地があること
 前記2のとおり,本件再審の訴えが適法である以上,本件においては,多数意見が引用する平成25年11月21日第一小法廷決定の説示するところによれば、再審事由が存在する余地があるというべきであるから,原決定を破棄し,再審事由の有無について審理を尽くさせるために,本件を原審に差し戻すべきである。すなわち,記録によれば,本件再審の訴えの対象となっている前訴は,相手方Y1らがその訴えの提起に先立ち,相手方会社の顧問弁護士に相談し,その弁護士が前訴の相手方会社の訴訟代理人として,前訴において,相手方Y1らの請求を棄却するとの答弁をしつつも,請求原因をおおむね認める答弁をし,積極的な反証活動も行っていないこと,前訴において相手方Y1らの請求を認容する判決(以下「前訴判決」という。)が確定した後,相手方Y1がその確定証明書を上記弁護士に送付するよう手続を執っていることがうかがわれ,これらによれば,前訴において相手方Y1らと相手方会社がなれ合いで訴訟追行をしていたことは否定し難い。また,記録によれば,抗告人は相手方会社の株主総会等においてその解散に反対をしていたことがうかがわれるから,抗告人が前訴の係属を知れば,これに参加して相手方Y1らの請求を争おうとすることは容易に推認され,かつ,相手方会社においても,そのことを十分に認識していたと推認される。そうであるにもかかわらず,相手方会社は,前訴において上記のとおりなれ合いで訴訟追行をし,また,記録上,抗告人に対して,前訴の係属を通知したこともうかがわれない。その結果,抗告人は,前訴に参加するなどして相手方会社に対する解散請求の当否を争う機会を逸したものであるということができる。このような一連の経緯に鑑みると,前訴における相手方会社の訴訟活動は,会社法により被告適格を与えられた者によるものとして著しく信義に反しており,抗告人に前訴判決の効力を及ぼすことは手続保障の観点から看過することができないものとして,前訴判決には民訴法338条1項3号の再審事由が存在する余地があるというべきである。
4 多数意見に従った場合に執るべき手続
 なお,仮に独立当事者参加の申出における請求の定立を厳格に要求する多数意見に立った場合でも,裁判所としては,その請求の定立が不可能でないのにこれをしない当事者に対しては,補正の機会を与えるために,求釈明の上,相当の期間を定めて補正を促し,又は補正を命ずるべきであって(民訴法137条1項),それにもかかわらず補正に応じず請求を定立しない場合に初めてその申立てが不適法であることを理由に再審の訴えを却下するという取扱いをすべきである。したがって,本件においても,本件再審の訴えを直ちに却下することはせず,補正の機会を与えるために原審に差し戻すのが相当である。 
(裁判長裁判官 横田尤孝 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 白木勇 裁判官 山浦善樹)