勾留の裁判に対する準抗告の裁判に対する特別抗告事件 最高裁判所第二小法廷平成30年(し)第585号 平成30年10月31日決定

       主   文

本件抗告を棄却する。

       理   由

 本件抗告の趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって、刑訴法433条の抗告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み職権により調査すると,原決定が,本件勾留の被疑事実である大麻の営利目的輸入と,本件勾留請求に先立つ勾留の被疑事実である規制薬物として取得した大麻の代替物の所持との実質的同一性や,両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等のみから,前件の勾留中に本件勾留の被疑事実に関する捜査の同時処理が義務付けられていた旨説示した点は是認できないが,いまだ同法411条を準用すべきものとまでは認められない。 
 よって,同法434条,426条1項により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官三浦守の補足意見がある。

 裁判官三浦守の補足意見は,次のとおりである。

 本件は,大麻の密輸入に関し,いわゆるクリーン・コントロールド・デリバリーによる捜査が行われ,被疑者は,本件の勾留請求の前に,規制薬物として取得した大麻の代替物の所持の被疑事実により勾留され,その後,大麻の営利目的輸入の被疑事実により本件の勾留請求がされたというものである。
 本件の被疑事実と前件の被疑事実とは,一連のものであって密接に関連するが,社会通念上別個独立の行為であるから,併合罪の関係にあるものと解されるところ,両事実の捜査に重なり合う部分があるといっても,本件の被疑事実の罪体や重要な情状事実については,前件の被疑事実の場合より相当幅広い捜査を行う必要があるものと考えられる。
 したがって,原決定が,両事実の実質的同一性や,両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等のみから,捜査機関が,前件の被疑事実による勾留の期間中に,本件の被疑事実の捜査についても,同時に処理することが義務付けられていた旨の説示をした点は,刑訴法60条1項,426条の解釈適用を誤ったものというほかない。
 しかし,本件の証拠関係,捜査状況のほか,被疑者が原決定により釈放され,既に相当の日数が経過していること等も考え合わせると,原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認められるとすることについては,わずかながら躊躇を覚えるところであり,同法411条を準用すべきものとまでは認められない。
(裁判長裁判官 鬼丸かおる 裁判官 山本庸幸 裁判官 菅野博之 裁判官 三浦守)