売却許可決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 最高裁判所第三小法廷平成26年(許)第15号 平成26年11月4日決定

       主   文

本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。

       理   由

1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1)東京地方裁判所は,平成24年7月12日,原々決定別紙物件目録記載の土地建物(以下「本件不動産」という。)につき,債権者をA,債務者を抗告人として,強制競売の開始決定をした(同裁判所同年(ヌ)第204号強制競売事件。以下「本件競売事件」という。)。執行裁判所は,同年12月18日,本件不動産につき,売却基準価額を26億6826万円,買受けの申出の保証の額を5億3365万2000円と定めた。
(2)平成25年3月29日にされた売却許可決定が代金不納付により効力を失ったことから,裁判所書記官は,同年8月9日,本件不動産につき,再度,期間入札の方法により執行官に売却を実施させることとし,入札期間を同年10月3日から同月10日まで,開札期日を同月17日午前9時30分と定めた。
(3)B(以下「B」という。)及び外国法人であるC(以下「C」という。)は,買受けの申出の保証を提供した上で,入札書等を執行官に提出して,上記(2)の入札期間内に入札をした。Bの入札価額は22億1000万円,Cの入札価額は50億1000万円であり,他に入札者はいなかった。
(4)執行官は,平成25年10月17日午前9時30分に開かれた開札期日において開札を行い,最高の価額で買受けの申出をしたCの入札を有効と判断して,Cを最高価買受申出人と定めた。執行裁判所は,上記開札期日の後,Bに買受けの申出の保証を返還した。
(5)執行裁判所は,平成26年1月23日,Cの入札は代表者の資格を証する文書を執行官に提出せずにされた無効なものであるから,執行官がCを最高価買受申出人と定めた売却の手続には重大な誤りがあり,民事執行法71条7号に掲げる売却不許可事由があるとして,Cに対する売却不許可決定をし,同決定はその後確定した。
(6)Bは,平成26年3月10日,執行裁判所からの照会に対し,上記(2)の売却実施処分につき再度の開札期日が指定される場合には,本件不動産の買受けを希望し,執行裁判所の定める期間内に買受けの申出の保証を再度提供する旨記載した回答書を提出した。執行裁判所は,同月11日,上記売却実施処分につき,再度の開札期日を同月20日午前11時と定めるとともに,買受けの申出の保証を再度提供する期限を同月18日午後5時と定めた。Bは,同期限までに,買受けの申出の保証を提供した。
(7)執行官は,平成26年3月20日午前11時に開かれた開札期日において,Cの入札を排除した上で開札を行い,Bを最高価買受申出人と定めた。執行裁判所は,同月24日,Bに対する売却許可決定をした。この決定に対し,抗告人が執行抗告をした。
2 原審は,〔1〕 本件競売事件において,当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日を開くという方法を選択した執行裁判所の判断が不合理で違法なものということはできない,〔2〕 再度の開札期日においてCの無効な入札は排除されるほかなく,執行裁判所がCの入札の瑕疵を治癒させなかったことが違法となる余地はないとして,抗告人の執行抗告を棄却した。
3 抗告代理人床井茂,同渡辺博,同金谷良の抗告理由第2の2及び3について
(1)所論は,上記2〔1〕の原審の判断は,競落価格の適正らしさを欠き,本件不動産がより高額で売却されることに対する債務者の利益を一方的に侵害するものであって,違法であるというのである。
(2)上記1の事実関係によれば,本件競売事件の期間入札において入札をしたのは,BとCのみであり,当初の開札期日において,執行官がCの入札を誤って有効と判断したという瑕疵(以下「本件瑕疵」という。)がなければ,当初の開札期日において,Cの入札は排除され,Bの入札を無効とすべき事情がない限り,Bが最高価買受申出人と定められるべきであったといえる。そして,Bは,Cに対する売却不許可決定が確定した後,当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日が指定される場合には,なお本件不動産の買受けを希望し,執行裁判所の定める期間内に買受けの申出の保証を再度提供する旨を明らかにしていたところであり,他にBの入札を無効とすべき事情があったことはうかがわれない。
 このような場合に,本件瑕疵があるからといって,既に行われた入札までの手続を含む売却の手続全体が瑕疵を帯びると解すべき理由はないから,再度の開札期日においてCの無効な入札が排除されれば,当初の入札までの手続を前提に売却の手続を続行するのに何ら支障はない。当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日を定めてその後の手続を続行することは,本件競売事件における公正かつ迅速な手続による売却の実現に資するものとして合理的なものということができる。このことは,新たに売却実施処分をした場合には,Bの入札価額より高額での買受けの申出がされる可能性があったとしても,何ら異なるものではない。
 以上の事情に照らせば、本件競売事件において,Cに対する売却不許可決定が確定した後,当初の入札までの手続を前提に再度の開札期日を開くこととした執行裁判所の判断に違法があるということはできない(最高裁平成22年(許)第2号同年8月25日第一小法廷決定・民集64巻5号1482頁参照)。上記2〔1〕の原審の判断は,是認することができる。論旨は採用することができない。
4 同第2の4について
 所論の点に関する上記2〔2〕の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 木内道祥 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春 裁判官 山崎敏充)