平成24年(受)第2705号  平成27年5月19日最高裁判所判決

       主   文

1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2 上告人の被上告人に対する原判決別紙物件目録記載の土地に係る橋本市水道事業給水条例(平成18年橋本市条例第215号。平成25年橋本市条例第20号による改正前のもの)34条に基づく施設分担金837万2695円の納付義務が存在しないことを確認する。
3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 

       理   由

 上告代理人遠藤昭の上告受理申立て理由について
1 本件は、上告人が,担保権の実行としての競売により買い受けた原判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)について,本件土地の分譲のみを行う上告人は橋本市水道事業給水条例(平成18年橋本市条例第215号。平成25年橋本市条例第20号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)34条に基づく施設分担金の納付義務を負わないと主張して,上告人の被上告人に対する上記施設分担金の納付義務が存在しないことの確認を求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)本件条例34条は,「住宅地を造成しようとする者又は集合住宅,店舗,事業所,事務所若しくは倉庫等の建物を建築し,分譲し,又は賃貸する者が,水源,浄水,送配水施設等を必要とする場合は,第32条に規定する給水分担金のほか,水道事業管理規程で定めるところにより,施設分担金を納付しなければならない。」と規定する。
(2)A株式会社は,平成3年頃,本件土地を含む一団の土地を取得し,同4年に,和歌山県知事から開発行為の許可を受けてこれを住宅地として造成し,その一団の土地の一部につき本件条例34条等に基づく施設分担金を納付したが,本件土地については上記の施設分担金を納付していなかった。
(3)上記会社が所有していた本件土地を含む一団の土地については,平成19年3月16日に担保権の実行としての競売の手続が開始され,上告人は,同20年7月2日に競売により上記一団の土地を買い受けてその所有権を取得し,その分譲を始めた。
(4)本件土地につき本件条例34条に基づく施設分担金を納付すべきものとされる場合におけるその金額は,原審口頭弁論終結時において,837万2695円であった。
3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,上告人の請求を棄却すべきものとした。
(1)本件条例34条に基づく施設分担金は,被上告人が設置する水道施設について,その設置によって特に利益を受ける者から,その受益の限度において徴収され,上記水道施設の維持管理等の費用に充てられるものであるから,地方自治法224条に定める分担金であって,同法228条1項により,これに関する事項については条例によって定めることを要するものと解される。
(2)本件条例34条は,土地についての定めを置くのに加えて,建物について,建築した者のみならず,分譲し又は賃貸する者も施設分担金を納付すべきことを定めているので,造成された土地につき水道施設の敷設により当該土地又はその土地上の建物から収益を得る者から,幅広くかつ漏れなく施設分担金を徴収し,水道施設の維持管理等の費用に充てることを企図したものと解されることからすると,建物についての定めと同様に,土地についても,住宅地を造成しようとする者だけでなく,住宅地を分譲し又は賃貸する者も施設分担金を納付すべき旨を定めたものと解される。したがって,本件土地を分譲する上告人は,前記2(4)の本件条例34条に基づく施設分担金の納付義務を負うものである。
4 しかしながら,原審の上記3(1)の判断は是認することができるが,同(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 本件条例34条に基づく施設分担金は地方自治法224条にいう分担金であり,同法228条1項によりこれに関する事項は条例で定める必要があるところ,本件条例34条は,その文理上,水道施設を必要とする土地又は建物につき,「住宅地を造成しようとする者」又は「集合住宅,店舗,事業所,事務所若しくは倉庫等の建物を建築し,分譲し,又は賃貸する者」に上記の施設分担金の納付義務を負わせることを定めるものであることが明らかである。
 したがって,水道施設を必要とする土地についての本件条例34条に基づく施設分担金に関しては,住宅地を造成しようとする者のみがその納付義務を負い,住宅地の分譲のみを行う者はその納付義務を負わないと解するのが相当である。
 なお,本件条例34条は平成25年橋本市条例第20号により改正されているが,上記改正は原審口頭弁論終結後にされたものであるから,上告人が上記改正後の同条の規定に基づき本件土地に係る施設分担金の納付義務を負うか否かは当審における審理の対象になるものではない。
5 以上と異なる見解の下に,上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上告人の請求は理由があるから,これを棄却した第1審判決を取消し,同請求を認容すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 木内道祥 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春 裁判官 山崎敏充)