平成2年12月4日第三小法廷判決

会社法判例百選[第3版]10「相続による株式の共有」

株主総会決議不存在確認請求事件
最高裁判所平成元年(オ)第五七三号
平成二年一二月四日第三小法廷判決
上告人 株式会社大和館
右補助参加人 略
被上告人 略

主   文

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

理   由

一 上告代理人楠田尭爾、同加藤知明、同田中穰の上告理由第一点及び第二点並びに上告補助参加人代理人初鹿野正の上告理由第二点及び第三点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
二 上告代理人楠田尭爾、同加藤知明、同田中穰の上告理由第三点及び上告補助参加人代理人初鹿野正の上告理由第一点について
 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法二〇三条二項の定めるところに従い、右株式につき「株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人」(以下「権利行使者」という。)を定めて会社に通知し、この権利行使者において株主権を行使することを要するところ(最高裁昭和四二年(オ)第八六七号同四五年一月二二日第一小法廷判決・民集二四巻一号一頁参照)、右共同相続人が準共有株主としての地位に基づいて株主総会の決議不存在確認の訴えを提起する場合も、右と理を異にするものではないから、権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、特段の事情がない限り、原告適格を有しないものと解するのが相当である。
 しかしながら、株式を準共有する共同相続人間において権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠く場合であっても、右株式が会社の発行済株式の全部に相当し、共同相続人のうちの一人を取締役に選任する旨の株主総会決議がされたとしてその旨登記されている本件のようなときは、前述の特段の事情が存在し、他の共同相続人は、右決議の不存在確認の訴えにつき原告適格を有するものというべきである。けだし、商法二〇三条二項は、会社と株主との関係において会社の事務処理の便宜を考慮した規定であるところ、本件に見られるような場合には、会社は、本来、右訴訟において、発行済株式の全部を準共有する共同相続人により権利行使者の指定及び会社に対する通知が履践されたことを前提として株主総会の開催及びその総会における決議の成立を主張・立証すべき立場にあり、それにもかかわらず、他方、右手続の欠缺を主張して、訴えを提起した当該共同相続人の原告適格を争うということは、右株主総会の瑕疵を自認し、また、本案における自己の立場を否定するものにほかならず、右規定の趣旨を同一訴訟手続内で恣意的に使い分けるものとして、訴訟上の防御権を濫用し著しく信義則に反して許されないからである。
 記録によれば、(一)被上告人の本件訴えは、(1)奥村俊二は、上告会社の発行済株式の全部である七〇〇〇株(以上「本件株式」という。)を所有していたところ、昭和五七年三月二四日死亡し、妻正枝及び被上告人(長男)、上告会社代表者奥村信幸(二男)、上告補助参加人奥村武彦(三男)外四名の子が本件株式を共同相続し、昭和六〇年二月二三日右正枝も死亡して、被上告人外六名がこれを共同相続した、(2)同年二月二四日開催の上告会社の株主総会において奥村信幸の外奥村朝子及び奥村まゆみを取締役に、奧村武彦を監査役にそれぞれ選任する旨の決議(以下「本件決議」という。)がされたとして、同年三月一一日その旨商業登記簿に登記された、(3)しかし、右株主総会が開催されて本件決議がされた事実は存在しない旨主張して,上告会社に対し、本件決議の不存在確認を求めるものであること、(二)これに対し、上告会社は、共同相続人間において、本件株式の遺産分割は未了であり、右株式につき権利行使者を定めてその旨上告会社に通知する手続もされていないとして被上告人の訴えの利益ないし原告適格を争っていることが明らかである。そうすると、前記説示に照らし、本件においては、被上告人が本件決議の不存在確認の訴えを提起しうる特段の事情が存在するものというべきであり、被上告人の原告適格を肯認した原審の判断は、その結論において是認することができる。論旨は、以上と異なる見解に立ち、又は原判決の結論に影響を及ぼさない部分をとらえてその違法をいうものにすぎず、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 
(裁判長裁判官 園部逸夫 裁判官 坂上壽夫 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)