強盗殺人,死体遺棄被告事件 最高裁判所第三小法廷平成26年(あ)第477号 平成28年4月26日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人今村義幸の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
 付言すると,本件は,高利貸しを本体とする事業グループの従業員である被告人が,同僚のA及びB並びに知人のCと順次共謀の上,同グループの会長及びその息子である専務を殺害して現金等を強奪しようと企て、長野市内の会長宅において,睡眠導入剤を用いて専務(当時30歳)を昏睡状態に陥らせたところ,その妻(当時26歳)に不審を抱かれ,強盗殺人を成功させるために同女の殺害も決意して同女をロープで絞殺し,その後,専務及び就寝中の会長(当時62歳)を順次,同様に絞殺して現金合計約416万円を強取し,同人らの死体を愛知県内の資材置場まで運んで土中に埋めて遺棄するなどした強盗殺人,死体遺棄の事案である。
 被告人は,前記事業グループの従業員として長年会長宅に住み込んで働いてきたが,かねて会長親子から頻繁に暴力的な扱いを受け,専務からは逃げたら命を奪うかのような脅しを繰り返し受けながら,長時間の労働を強いられるなどした。そのため,被告人は,心身共に疲弊し,会長親子の束縛から解放されたいという思いを募らせ,会長らの殺害を決意し,また死体運搬・保管役のCへの報酬の原資等を得るため,会長らの現金等を奪うことにして,A,B及びCと共に本件に及んだ。このような動機,経緯には,酌むべき事情として相応に考慮すべき点もあるが,他の解決策を何ら試みておらず,安易かつ短絡的といわざるを得ない上,専務の妻の殺害との関係では,何ら酌量すべき事情にはならない。そして,会長及び専務に対する強盗殺人,死体遺棄は綿密とはいえないまでも計画性が認められ,専務の妻の殺害は,犯行完遂の障害を排除する意図からあえて行ったものである。また,本件犯行態様は冷酷かつ非情であり,一度に3名の生命を奪ったという結果は誠に重大で,遺族らの処罰感情は厳しい。被告人は,会長親子の殺害と死体処分のための資金の強奪を提案し,A,Cを順次犯行に引き込みつつ具体的な準備を進め,犯行当日も,睡眠導入剤により専務を昏睡させ,その妻に不審を抱かれるや,ためらうAを説得し,急きょBも呼び出し,自ら率先して被害者3名の殺害に着手し,死体の遺棄も自ら実行するなど,終始犯行を主導したものである。 
 以上のような事情に照らすと,被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ず,被告人が警察から事情聴取を受けた末とはいえ自首し,反省の態度を示していることなど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
 よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官 野口元郎 公判出席
(裁判長裁判官 大橋正春 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 木内道祥 裁判官 山崎敏充)