放送受信料請求事件 最高裁判所第三小法廷平成29年(受)第2212号 平成30年7月17日判決

       主   文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

 上告代理人前田泰志,同竹田真理の上告受理申立て理由について
1 本件は,被上告人が,遅くとも平成7年6月末までに被上告人の放送の受信についての契約を締結した上告人に対し,同契約に基づき,平成23年4月分から平成29年5月分までの受信料合計9万6940円及び遅延損害金の支払を求める事案である。上告人は,被上告人が同契約に基づく受信料の支払を20年間請求しなかったことから,民法168条1項前段所定の定期金債権の消滅時効が完成したと主張して争っている。
2 所論は,被上告人の放送の受信についての契約(以下「受信契約」という。)に基づく受信料債権には民法168条1項前段の規定は適用されないとした原審の判断には,法令の解釈適用の誤りがある旨をいうものである。
3 そこで検討すると,受信契約に基づく受信料債権は,一定の金銭を定期に給付させることを目的とする債権であり,定期金債権に当たるといえる。しかし,放送法は,公共放送事業者である被上告人の事業運営の財源を,被上告人の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に広く公平に受信料を負担させることによって賄うこととし,上記の者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定を置いているのであり(最高裁平成26年(オ)第1130号,同年(受)第1440号,第1441号同29年12月6日大法廷判決・民集71巻10号1817頁参照)、受信料債権は,このような規律の下で締結される受信契約に基づき発生するものである。受信契約に基づく受信料債権について民法168条1項前段の規定の適用があるとすれば,受信契約を締結している者が将来生ずべき受信料の支払義務についてまでこれを免れ得ることとなり,上記規律の下で受信料債権を発生させることとした放送法の趣旨に反するものと解される。
 したがって,受信契約に基づく受信料債権には,同項前段の規定は適用されないと解するのが相当である。 
4 これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 林景一 裁判官 岡部喜代子 裁判官 山崎敏充 裁判官 戸倉三郎 裁判官 宮崎裕子)