検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告の決定に対する特別抗告 最高裁判所第三小法廷 平成27年(し)第401号 平成27年12月14日決定

       主   文

原決定の主文第2項を取り消す。
大津地方検察庁検察官は,閲覧請求人に対し,平成26年7月31日付け司法警察員A作成の犯罪捜査報告書(確定審の検甲50号証),同年5月16日付け司法巡査B作成の犯罪捜査報告書2通(同検甲51,52号証)を閲覧させなければならない。ただし,別紙の除外部分を除く。
原決定の主文第2項に関するその余の準抗告を棄却する。
その余の本件抗告を棄却する。

       理   由

 本件抗告の趣意は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑事確定訴訟記録法(以下「法」という。)8条2項,刑訴法433条の抗告理由に当たらない。
 所論に鑑み職権により判断する。 
1 本件は、閲覧請求人が,平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故で放出された放射性物質に汚染された木材チップ(以下「本件木くず」という。)合計約310立方メートルを滋賀県内の河川管理用通路に廃棄したという被告人に対する廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録の一部である〔1〕被告事件の裁判書,〔2〕滋賀県が河川敷進入のための鍵を貸与した経緯,本件木くずと余罪に関する木くずの両方(以下,単に「木くず」という。)について移動経路,保管状況等が分かる供述調書,報告書等,〔3〕起訴状(ただし,いずれも関係者の固有名詞や役職名,その他プライバシーに関する部分は除く。)の閲覧請求をしたところ,同記録の保管検察官が,被告事件の裁判書,起訴状,確定審の検甲16号証(滋賀県が鍵を貸与した経緯等に関するもの)につき閲覧を許可する一方,木くずの移動経路,保管状況等が分かる供述調書,報告書等の部分については,法4条2項5号の閲覧制限事由に該当するとして,閲覧不許可としたため,閲覧請求人が準抗告を申し立てたという事案である。
 原決定は,閲覧請求人の主張を一部認め,主文第1項において,保管検察官の閲覧一部不許可処分を取消した上,主文第2項において,保管検察官は,閲覧請求人に対し,平成26年7月31日付け司法警察員A作成の犯罪捜査報告書(確定審の検甲50号証),同年5月16日付け司法巡査B作成の犯罪捜査報告書2通(同検甲51,52号証)(ただし,最終搬入先(試験場と称する場所)の所有者名,所有者代表者名及び場所(ただし,都道府県名及び市町村名以外の部分)を除いた部分)につき,閲覧させなければならないとし,主文第3項において,その余の準抗告申立てを棄却した。原決定が原々処分を取り消して新たに閲覧を認めた部分は,要するに,〔1〕木くずの移動経路に関する情報部分(取扱業者名,土地所有者名を含む全情報部分),〔2〕木くずの最終搬入先の都道府県市町村名までの情報部分である(以下「本件閲覧許可部分」という。)。
2 そこで,検討すると,次のとおりである。
(1)本件閲覧許可部分のうち,別紙の除外部分については,これらが閲覧されると木くずの取扱業者,移動経路,搬入先の土地所有者等が特定され,これにより風評被害,回復し難い経済的損害等が発生し,関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれが認められる。閲覧請求人自身,上記のとおり,「関係者の固有名詞や役職名,その他プライバシーに関する部分は除く」として閲覧を請求しているのであって,原決定は請求の範囲を超えているともいえる。また,本件は,被告人が,放射性物質を含有する木くずを福島県内から全国各地に投棄して拡散する中で,滋賀県内の河川管理用通路上に敷きならして放置したというものであるが,木くずの移動経路,搬入先については,市町村名の閲覧まで認めなくても,裁判の公正を担保するに十分と考えられる。
 以上によれば,本件閲覧許可部分のうち,別紙の除外部分の限度では,法4条2項5号の閲覧制限事由に該当するとした保管検察官の判断は正当である。これに該当しないとして,保管検察官の閲覧一部不許可処分を取り消した上,原決定の主文第2項のとおり閲覧をさせなければならないとした原判断には,同号の解釈適用を誤った違法がある。
(2)なお,閲覧請求人は,上記被告事件の告発人であるが,市民グループの代表者として,国民・周辺住民の知る権利や平穏に生活する権利を主張するのみであって,法4条2項ただし書にいう「訴訟関係人」に当たらないのはもとより,本件閲覧許可部分との関係において「閲覧につき正当な理由があると認められる者」にも当たらない。
3 そうすると,原決定には,決定に影響を及ぼすべき法令違反があり,これを取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よって,法8条2項に基づき刑訴法411条1号を準用し,同法434条,426条2項により,原決定の主文第2項を取り消した上,同部分に関する準抗告につき一部を認容し,その余を棄却することとし,法8条2項,刑訴法434条,426条1項により,その余の本件抗告を棄却することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 大谷剛彦 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大橋正春 裁判官 木内道祥 裁判官 山崎敏充)