死体損壊,死体遺棄,殺人被告事件 最高裁判所第二小法廷平成22年(あ)第2003号 平成24年12月14日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人今井猛嘉の上告趣意のうち,刑法46条の適用に関して判例違反をいう点は,原判決の認定に沿わない事実関係を前提とするものである上,その実質は量刑不当の主張であり,自首の成立に関して判例違反をいう点は,原判決は所論の点につき何ら法律判断を示していないから,前提を欠き,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
 付言するに,本件は,被告人が,いずれも思いどおりにならない相手方の態度に激怒するなどして,(1)平成11年4月22日頃,交際していたフィリピン人女性に対し,殺意をもって,仰向けに寝ている同人の頸部に掛け布団のへりを両手で強く押し当てて圧迫し,窒息死させて殺害し,(2)平成20年4月3日,その後交際していたフィリピン人女性に対し,殺意をもって,同人の頸部を両手で絞め付けるなどし,窒息死させて殺害し,(3)同日,カッターナイフ等を用いて,同人の死体の胸部,腹部,四肢等を切断するなどして解体して損壊し,その後,これを運河に投棄するなどして遺棄した,という事案である。被告人は,平成12年4月14日,(1)の被害者の死体の損壊,遺棄等の罪により懲役3年6月に処せられ,その裁判は同月29日確定している。第1審判決は,被告人を(1)の罪について懲役14年に,(2)及び(3)の罪について無期懲役に処したところ,原判決は,第1審判決中,(1)の罪に関する部分は維持したものの,(2)及び(3)の罪に関する部分については刑の量定が軽すぎるとしてこれを破棄し,被告人を死刑に処した。
 原判決の(2)及び(3)の罪に関する刑の量定について判断する。被告人は,交際を始めた被害者の歓心を買い,親密な関係を続ける手段として同居して家事や子供の世話などをして同人に尽くしていたところ,家賃の支払等をめぐって関係が悪化した上,同居を解消して家を出て行こうとする被告人に対し,被害者が無視する態度をとったことなどから,同人が自分の思いどおりにならず,自分を利用し,馬鹿にしているなどと邪推して激怒し,その怒りを短絡的に殺意に転化させ,同人を殺害し,その死体を細かく解体して処分し,その存在を完全に消滅させようと決意したものであって,その経緯,動機に酌量の余地はない。被告人は,犯行を決意すると,同人の頸部を強くつかんでそのまま仰向けに押し倒し,馬乗りになって自己の下半身で押さえ付けて身動きできなくさせた上,(1)の殺害の場面を思い浮かべながらそれと同様に被害者が息絶えて動かなくなるまで首を力一杯両手で絞め続け,窒息死させた。その後,直ちに,刑事責任の追及を免れるため,カッターナイフ等を使って同人の死体の解体に着手し,温かみの残る死体の腹部を切り開いて臓器を取出し,肉や皮膚を削ぎ落とし,手足を切断するなどし,4時間近くにわたって40片以上の部分に解体することを続けた上,頭部や手足等を運河や生活排水処理槽へ投げ捨て,肉片等をコインロッカーの中に放置して遺棄した。殺害の態様が執よう,残忍であることはもとより,死体損壊,遺棄の点も残虐であり,本件一連の犯行はその態様においても悪質極まりないものである。被害者は,当時2歳の幼児を残して22歳の若さでその生命を絶たれたのであって,その結果は悲惨かつ重大である。被害者の死が遺族らに与えた精神的苦痛は極めて大きく,遺族らは被告人に対してしゅん烈な処罰感情を有している。被告人は,平成11年当時,あえて,(1)の被害者に対する死体損壊,遺棄の罪については認めつつ,殺害についてはあくまで嘘をつきとおした結果,殺人の罪を免れたものの,これと密接に関連する死体損壊等の罪により刑に服しており,(1)の殺害についても反省,悔悟する機会は与えられたといい得るところ、その刑の服役を経てもなお,従前の経験を利用し,経緯及び態様の類似する(2)及び(3)の殺人等の犯行を敢行したものである。
 以上の事情を踏まえると,被告人が捜査段階において詳細な自白をし,その後変遷はあったものの,第1審公判の最終段階では同旨の供述をするに至っていることなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,その刑事責任は誠に重大であり,被告人を死刑に処した原判断は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 
 よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官水野美鈴 公判出席
(裁判長裁判官 小貫芳信 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美)