死体遺棄,銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人,窃盗,火薬類取締法違反被告事件 最高裁判所第三小法廷平成21年(あ)第68号 平成24年10月23日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人内山成樹,同荒木和男,同大熊裕起の上告趣意は,死刑制度に関して憲法11条,13条,31条,36条違反を主張し,弁護人福島昭宏,同河合繁昭の上告趣意は,同制度に関して憲法12条,13条,36条違反を主張するが,死刑制度がこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁、最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)及びその趣旨に照らして明らかであるから,理由がない。弁護人内山成樹ほかのその余の上告趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であり,被告人本人の上告趣意は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。 
 付言すると,本件は,暴力団A総業の組長であった被告人が,いずれもその活動に関連して,(1)自己も関与した交通事故を仮装した保険金詐欺事件に関する口封じのため,配下組員と共謀の上,同事件に被害者役として関与した者を山中に連れ出してけん銃で射殺した殺人,けん銃加重所持等の事実,(2)A総業に出入りしていた者から,同人が警察に逮捕されるよう計画したなどと疑われたことに憤慨し,配下組員ほかと共謀の上,上記の者を組事務所で自らけん銃を発射して殺害するなどした殺人,死体遺棄等の事実,(3)対立組織であるB一家の傘下組長であった者に,抗争に関連して自己の舎弟になるよう求めたがこれを拒まれたことなどから,配下組員と共謀の上,飲食店前路上で,同組長をけん銃で射殺するなどした殺人,けん銃発射,けん銃加重所持,死体遺棄等の事実,(4)配下組員と共謀の上,けん銃7丁等及び適合実包多数等を所持した事実からなる事案である。
 量刑上重視すべき(1)ないし(3)の各事実についてみると,これらは,暴力団における,犯罪の隠蔽,内部対立,抗争のためにされた組織的犯行であって,その罪質は甚だ悪質であり,それぞれの経緯,動機に酌量の余地はない。犯行態様は,いずれも,被害者を情け容赦なくけん銃で射殺したというものであって,冷酷かつ残虐である。本件において3名もの生命が奪われており,その結果は重大であって,(1),(3)の各被害者の遺族はしゅん烈な処罰感情を述べている。被告人は,(1),(3)の各犯行においては,首謀者として,配下組員に指示してそれぞれの被害者を殺害させ,また,(2)の犯行においては,配下組員にけん銃を準備させた上,自ら被害者殺害の実行行為に及んでいる。いずれも,被告人が暴力団の組織力を活用して敢行したものであって,共犯者中,最も重い責任を負うべき立場にある。なお,(4)の犯行において,多数のけん銃等を暴力団組織として保管管理していた事実も軽視することはできない。
 そうすると,被告人の刑事責任は極めて重大であり,(2)の事実に関しては,被害者は他の組員に傍若無人な振る舞いをし,本件当日も,けん銃2丁を携行した状態で憤激して組事務所に押し掛けて来たなどの事情があったこと,被告人又は上部団体から,それぞれの被害者の遺族に対して金銭が支払われ,特に,謝罪文を受け取った(2)の被害者の遺族からは被告人を宥恕する旨の上申書が提出されていることなど,被告人のために酌むべき事情を最大限考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
 よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官水野美鈴 公判出席
(裁判長裁判官 大谷剛彦 裁判官 田原睦夫 裁判官 岡部喜代子 裁判官 寺田逸郎 裁判官 大橋正春)