殺人,死体遺棄,強盗殺人,窃盗,有印私文書偽造,同行使,詐欺被告事件 最高裁判所第三小法廷平成24年(あ)第1454号 平成26年12月2日第三小法廷判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人村中貴之,同贄田健二郎の上告趣意のうち,死刑制度に関して憲法31条,36条違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁、最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由がなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。 
 付言すると,本件は,妻子のあった被告人が,(1)同棲中の不倫相手(当時22歳)に,無断で貯金口座から引出して使い込んだ990万円の返済を強く迫られ,警察に被害届を提出すると言われ,それを阻止するとともに債務の支払を免れようと考え,平成17年10月26日頃,自宅寝室において,同女の頸部を両手で強く圧迫して窒息死させて殺害し,債務の支払を免れた上,その翌日から約3か月にわたり,同女のキャッシュカード,通帳等を使って,同女名義の預貯金口座から現金合計約2358万円を引き出したり自己の管理する口座に振り込ませたりし(強盗殺人,窃盗,有印私文書偽造,同行使,詐欺),(2)妻に無断で離婚届を提出した後に入籍していた別の不倫相手(当時25歳)との別れ話のもつれから同女の殺害を決意し,平成22年2月23日,自宅寝室において,同女の頸部を両手で強く圧迫するなどして窒息死させて殺害し,その後,同女の死体を別居中の妻方まで運んだ上,倉庫内に隠して遺棄した(殺人,死体遺棄),という事案である。(1)の強盗殺人の犯行は,被告人が,経済的な援助まで受けていた不倫相手の女性を裏切って大金を使い込み,その返済に誠意のない対応を続けたことが主な原因となっており,(2)の犯行は,(1)の犯行の約4年4か月後にまたしても別の不倫相手の女性を殺害したものであるが,これも,被告人が同女に対して妻との関係等につきその場しのぎの対応をとり続けていたことが主な原因となっているのであって,各犯行の経緯及び身勝手な動機に酌むべき点はない。また,被告人は,仰向けに倒れた各被害者の腹部に馬乗りになって頸部を両手で圧迫し続けるなどし,(2)の犯行では被害者の口から空気が漏れるような音が聞こえると,更に革製ベルトで頸部を絞め付け殺害している。いずれも強固な殺意に基づく非情かつ残酷な犯行である。何よりも,若い女性2名の生命が奪われた結果は誠に重大である。遺族らの処罰感情も厳しい。
 そうすると,各殺害は計画的でないこと,被告人なりに,各被害者を殺害したことにつき反省の態度を示し,各被害者やその遺族へ謝罪の意思を表していることなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,その刑事責任は極めて重大であり,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
 よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官徳久正 公判出席
(裁判長裁判官 大谷剛彦 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大橋正春 裁判官 木内道祥 裁判官 山崎敏充)