殺人,殺人未遂,公務執行妨害,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件 最高裁判所第一小法廷平成24年(あ)第1647号 平成27年2月2日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人坂根真也,同藤原大吾の上告趣意のうち,死刑制度に関して憲法13条、31条,36条違反をいう点は,死刑制度がその執行方法を含め憲法に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由がなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。 
 付言すると,本件は,被告人が,秋葉原の歩行者天国における無差別殺人を企て,平成20年6月8日,(1)〔1〕トラックを疾走させて通行人らに衝突させて跳ね飛ばし,3名を殺害し,2名に傷害を負わせたが殺害に至らず,〔2〕更にトラックを降り,逃げる通行人らを鋭利な短剣様のダガーナイフで次々に突き刺すなどし,4名を殺害し,8名に傷害を負わせたが殺害に至らず,(2)現行犯逮捕しようとした警察官に上記ナイフを突き出すなどしたが殺害に至らず,その際に職務の執行を妨害するなどしたという事案である。
 本件は,周到な準備の下,強固な殺意に基づき,残虐な態様により敢行された無差別殺人事件であり,特に,7名を殺害し,10名に傷害を負わせるなどした結果は極めて重大であって,社会に与えた衝撃は大きく,遺族らの処罰感情もしゅん烈である。被告人は,派遣社員として職を転々とする中で社会への不満を募らせるとともに孤独感を深めていたところ,没頭していたインターネットの掲示板内で嫌がらせを受け,派遣先の会社内でも嫌がらせを受けたと思い込み,強い怒りを覚えて嫌がらせをした者らにその行為が重大な結果をもたらすことを知らしめようとして本件犯行に及んだものであるが,動機,経緯に酌量の余地は見いだせない。
 以上のような事情に照らすと,被告人の刑事責任は極めて重大であり,前科前歴がないことなどを考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
 よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官徳久正 公判出席
(裁判長裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 白木勇 裁判官 山浦善樹)