殺人,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反,火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反,放火予備,現住建造物等放火未遂,盗品等有償譲受け,旅券法違反,有印私文書偽造,同行使被告事件 最高裁判所第二小法廷平成21年(あ)第2058号 平成26年3月14日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人大熊裕起,同遠藤雄司,同村岡徹也の上告趣意のうち,憲法13条,31条,36条,98条2項違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)及びその趣旨に照らして明らかであるから,理由がなく,その余は,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
 付言すると,本件は,暴力団の組長である被告人が,配下の組員らと共謀の上,(1)対立する暴力団の組員による被告人が所属する暴力団組織の幹部の射殺事件への報復として,〔1〕対立する暴力団の元幹部宅に火炎びん等を用いて放火することを企て,実行犯の組員らが火炎びん等を準備し,1度目は放火の着手に至らず,2度目は着手したものの,放火は未遂に終わり,現場から逃げる際にけん銃を発射するなどした,〔2〕同暴力団の別の元幹部を殺害することを企て,実行犯の組員らが,同元幹部を公道上で待ち伏せ,同人の運転する車両に向けてけん銃を発射したが,同人に重傷を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった,〔3〕再び同元幹部らを殺害することを企て,実行犯の組員2名が,けん銃等を所持して同元幹部らがいた営業中のスナックに赴き,スナック店外で同元幹部のボディーガード1名を至近距離から射殺した上,スナック店内で同元幹部らに向けて弾丸十数発を発射し,たまたま居合わせた暴力団とは何ら関係のない一般客3名を射殺し,同元幹部ほか1名にも重傷を負わせたが殺害の目的を遂げなかった,〔4〕これらの事件の準備のために組員らにけん銃や盗難自動車を譲り受けさせ,また,けん銃を試射させるなどした,〔5〕これらの事件の犯跡隠ぺいのために,実行犯を海外逃亡させるべく他人名義の旅券の交付を受けさせて,出国の際に行使させ,また,組織として保管していたけん銃を山林内に隠匿させるなどした,(2)(1)〔1〕の事件の一部に関与した組員1名が命令に従わなくなったことから,制裁及び口封じのために同組員を殺害することを企て,病院の集中治療室に入院中であった同組員のベッドの位置を探り出した上,実行犯2名が,けん銃等を所持し,他の患者や病院関係者も在室する集中治療室内のベッドで寝ていた同組員に近づき,至近距離から弾丸5発を発射して同組員を射殺した,という事案である。
 量刑上重視すべき(1)〔3〕及び(2)の各犯行は,いずれも,対立する暴力団に対する報復や,自分に従わない組員に対する制裁等を目的として,組織的かつ計画的に行われたものであり,その罪質は反社会的で甚だ悪質である。犯行態様も,いずれも暴力団とは無関係の者の目の前で行われた,一般人を巻き込む危険性も意に介さないけん銃による射殺等の事案であり,非常に冷酷で残虐な犯行である。一連の犯行の結果,一般人3名を含む5名もの生命が奪われるなどしており,結果は誠に重大である。遺族らの処罰感情も厳しく,地域社会に与えた衝撃も計り知れない。被告人は,実行行為こそ担当していないものの,各犯行の首謀者であり,暴力団の上命下服の関係を利用し,配下の組員らに具体的指示を与えて犯行に及ばせたものであって、実行犯らと同等以上の責任があるといえる。それにもかかわらず,被告人は,責任回避の言動に終始しており,真摯な反省の情をうかがうことはできない。
 以上の事情に加え,被告人には懲役前科5犯を含む前科が11犯あることなどを踏まえると,被告人の所属する暴力団組織の幹部が(1)〔3〕の事件の被害者遺族らと和解をして一定額が遺族らに支払われたことなど被告人のために酌むべき情状を十分考慮しても,被告人の刑事責任は極めて重大であり,被告人を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 
 よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官水野美鈴 公判出席
(裁判長裁判官 鬼丸かおる 裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 山本庸幸)