殺人,覚せい剤取締法違反,死体損壊,死体遺棄被告事件 最高裁判所第一小法廷平成22年(あ)第1931号 平成25年11月25日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人鈴木一郎,同渡辺修の上告趣意のうち,死刑に関して憲法前文,9条,13条,14条,31条,36条,39条,98条2項違反をいう点は,その執行方法を含む死刑制度が憲法の上記各規定等に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和24年新(れ)第335号同26年4月18日大法廷判決・刑集5巻5号923頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)及びその趣旨に照らして明らかであるから,理由がなく,その余は憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
 本件は,被告人が,(1)平成17年1月9日,兵庫県内の被告人方において,交際していた女性(当時23歳)の頭部付近をハンマーで殴打して殺害し,その直後に,同女とともに被告人方に滞在していた同女の友人の女性(当時23歳)も同様の態様で殺害し,同月11日頃,被告人方において,各死体をのこぎり等で切断するなどして損壊し,同月13日頃から同月16日頃までの間,同県内の海中等に遺棄したという殺人,死体損壊,死体遺棄の事案,(2) 覚せい剤の使用,所持の事案である。
 量刑上重視すべき(1)の犯行は,資産家の息子と偽って交際し,現金を与えるなどしていた女性から,更に現金を強く要求されるとともに頭髪を引っ張られるなどしたことに激高して同女を殺害し,口封じのために同女の友人の女性も殺害したものである。交際していた女性の殺害については,上記のような被害者の言動に誘発された面はあるが,その言動自体,資産家の息子を装うという被告人の嘘が招いたものであり,友人女性については,特に落ち度は見当たらない。殺害態様は,いずれもハンマーで頭部付近を数回殴打して撲殺するという強固な殺意に基づく凶暴かつ残忍なものである上,死体の身元判明を妨げるべく,のこぎり,出刃包丁等で,頭部,両手両足を切断し,胴体を切り刻み,ペンチで抜歯をするなど,各死体を徹底的に解体して海中等に投棄したことは,非人間的かつ残虐性が顕著な犯行といわざるを得ない。被害者2名の生命を奪った結果は極めて重大で,遺族の処罰感情は峻烈である。本件が,その犯行態様の残虐性等から社会に与えた不安,恐怖も大きい。被告人は,本件犯行自体は認めるものの,犯行の態様等につき不合理な弁解に終始しており,真摯な反省の情をうかがうことはできない。
 以上のような諸事情に照らすと,本件殺人が計画的なものでないことなどの事情を考慮しても、被告人の刑事責任は極めて重大であり,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
 よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 
 検察官北岡英男 公判出席
(裁判長裁判官 金築誠志 裁判官 櫻井龍子 裁判官 横田尤孝 裁判官 白木勇 裁判官 山浦善樹)