殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,詐欺被告事件 最高裁判所第二小法廷平成25年(あ)第1126号 平成27年12月4日判決

       主   文

本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人野嶋真人,同中野大仁の上告趣意は,事実誤認,単なる法令違反の主張であり,被告人本人の上告趣意は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み記録を調査しても,共犯者の証言は,客観的証拠等によって十分裏付けられているもので信用性が高い一方,その証言内容を争う被告人の弁解は,甚だ無理がある不合理なもので採用できないなどとして,各犯行につき被告人と共犯者との共謀を認めた原判断は,相当なものと認められ,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
 被告人の量刑について付言する。
 本件は,被告人が,いとこである年下の共犯者と共謀し,(1)同人の養母(当時46歳)を殺害して死亡保険金を詐取しようと企て,共犯者が同女を浴槽内に沈めて溺れさせて殺害し,その死亡保険金3600万円をだまし取り,(2)金もうけのために利用しようとしていたところむしろ金銭トラブルになり邪魔者となった被告人の伯父(当時64歳)に対し,共犯者が伯父の左前胸部を柳刃包丁で突き刺して殺害した,という殺人2件,詐欺1件等の事案である。
 (1)の犯行は,傷害保険に加入させた上で,被害者に多量の睡眠薬を混入したドリンク剤を飲ませて熟睡させ,水を張った浴槽内に沈めて溺れさせて殺害し,事故死に見せかけて死亡保険金を詐取したものであり,(2)の犯行は,被害者と金銭トラブルになったことから,包丁等を準備して被害者方に赴き,酔って眠った被害者の左前胸部を突き刺して殺害したものであって,いずれも利欲的ないし身勝手な動機による計画性の高い,冷酷,非道な犯行である。理不尽に二人の生命が奪われた結果は極めて重大であり,(1)の被害者遺族らの処罰感情は厳しい。
 被告人は,共犯者が意のままになることを利用して,前記のような冷酷,非道な各犯行を発案,計画し,具体的に指示してこれを共犯者に実行させ、かつ,詐取した死亡保険金の多くを取得するなどしており,その責任は共犯者より相当に重い。被告人は,不合理な弁解に終始し,反省の情もうかがわれない。
 以上のような事情に照らすと,罰金前科しかないことなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,被告人の刑事責任は極めて重大であり,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 
 よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官野口元郎 公判出席
(裁判長裁判官 鬼丸かおる 裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 山本庸幸)