求償金請求事件 最高裁判所第二小法廷平成23年(受)第2543号 平成25年9月13日判決

       主   文

1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2 被上告人は,上告人に対し,5174万6632円及びうち2590万9181円に対する平成19年3月31日から支払済みまで年14%(年365日の日割計算)の割合による金員を支払え。
3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

       理   由

 上告代理人北村明,同宮下進,同小池雅雄の上告受理申立て理由第2について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)株式会社A銀行は,商人であるBに対し,〔1〕平成9年5月26日に2000万円を貸し付け,〔2〕平成10年3月9日に締結した貸越極度額を500万円とする当座貸越契約により貸越しをし,〔3〕平成11年5月26日に1000万円を貸し付けた。
(2)上告人は,Bから,BがA銀行に対して負う上記(1)〔1〕及び〔3〕の各貸付け並びに同〔2〕の当座貸越契約に係る債務(以下「B関係貸付け等債務」という。)につき、上告人がA銀行に代位弁済をしたときはその代位弁済額及びこれに対する代位弁済の日の翌日から年14.6%(年365日の日割計算)の割合による損害金を支払うとの約定で保証の委託を受け,上記(1)の各貸付日及び当座貸越契約締結日頃,A銀行との間で,B関係貸付け等債務を保証する旨の契約をした。
(3)被上告人は,上告人との間で,上記(1)の各貸付日及び当座貸越契約締結日頃,上記(2)の各保証の委託に基づきBが上告人に対して負担すべき各求償金債務(以下「本件各求償金債務」という。)について連帯保証する旨の契約をした。 
(4)BがB関係貸付け等債務につき期限の利益を喪失するなどしたため,上告人は,平成12年9月28日,A銀行に対し,B関係貸付け等債務の残元利金合計3013万5611円の代位弁済をした。
(5)Bは,平成13年6月30日に死亡し,被上告人が単独でBを相続した。被上告人は,上告人に対し,被上告人が単独でBを相続する旨を告げていた。
(6)被上告人は,上告人に対し,上記(3)の各連帯保証契約に基づく債務(以下「本件各連帯保証債務」という。)の履行として,本件各求償金債務について,第1審判決別紙損害金計算書1から3までのとおり,平成15年12月15日から平成19年3月30日まで合計422万6430円を支払った。
 この結果,本件各求償金債務の残元金の合計は2590万9181円,平成19年3月30日までの約定損害金利率の範囲内である年14%(年365日の日割計算)の割合による確定遅延損害金の合計は2583万7451円となった。
(7)上告人は,平成22年1月13日,被上告人に対し,本件各連帯保証債務の履行を求める旨の支払督促を佐倉簡易裁判所に申し立てた。この督促事件は,被上告人が督促異議の申立てをしたことにより本件訴訟に移行した。
2 上告人の本訴請求は,本件各求償金債務の連帯保証人である被上告人に対し,本件各連帯保証債務の履行請求権に基づき,求償金残元金と遅延損害金の支払を求めるものである。これに対し,被上告人は,上告人が代位弁済をした平成12年9月28日から5年が経過し,主たる債務である本件各求償金債務が時効消滅していると主張して,連帯保証人としてこれを援用するとともに,本件各連帯保証債務についても,平成16年6月3日より後は連帯保証人としての弁済もしていないので時効消滅していると主張して,これを援用した。
3 原審は,上記事実関係の下において,被上告人による本件各連帯保証債務の弁済は,その主たる債務である本件各求償金債務の消滅時効を中断する効力を有するものではないとして時効中断の再抗弁を排斥して,本件各求償金債務の時効消滅を認め,上告人の請求を棄却すべきものとした。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)主たる債務を相続した保証人は,従前の保証人としての地位に併せて,包括的に承継した主たる債務者としての地位をも兼ねるものであるから,相続した主たる債務について債務者としてその承認をし得る立場にある。そして,保証債務の附従性に照らすと,保証債務の弁済は,通常,主たる債務が消滅せずに存在していることを当然の前提とするものである。しかも,債務の弁済が,債務の承認を表示するものにほかならないことからすれば,主たる債務者兼保証人の地位にある者が主たる債務を相続したことを知りながらした弁済は,これが保証債務の弁済であっても,債権者に対し,併せて負担している主たる債務の承認を表示することを包含するものといえる。これは,主たる債務者兼保証人の地位にある個人が,主たる債務者としての地位と保証人としての地位により異なる行動をすることは,想定し難いからである。
 したがって,保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合,当該弁済は,特段の事情のない限り,主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である。
(2)これを本件についてみると,上記事実関係によれば,被上告人は,単独でBの本件各求償金債務を相続したことを知りながら,平成15年12月15日から平成19年3月30日まで本件各連帯保証債務の弁済を継続したものということができ,この弁済が本件各求償金債務の承認としての効力を有しないと解すべき特段の事情はうかがわれない。そうすると,上記弁済は,主たる債務者による承認として本件各求償金債務の消滅時効を中断する効力を有するというべきであり,上記の中断は,被上告人が連帯保証人として援用する本件各求償金債務及び本件各連帯保証債務の消滅時効に対しても,その効力を生ずるといえる(民法457条1項)。したがって,上告人が本件各連帯保証債務の履行を求める旨の上記支払督促を申し立てた平成22年1月13日の時点では,いずれの債務の消滅時効もまだ完成していなかったことになる。
5 以上によれば,上告人の再抗弁を排斥した原審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記説示によれば,上告人の請求は理由があるから,これを棄却した第1審判決を取消し,同請求を認容すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 竹内行夫 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる)