特許権侵害差止請求事件 最高裁判所第二小法廷平成24年(受)第1204号 平成27年6月5日判決

       主   文

原判決を破棄する。
本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。

       理   由

 上告代理人上谷清ほかの上告受理申立て理由第一点,第二点,第四点及び第五点について
1 本件は,特許が物の発明についてされている場合において,特許請求の範囲にその物の製造方法の記載があるいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームに係る特許権を有する上告人が,被上告人の製造販売に係る医薬品は上告人の特許権を侵害しているとして,被上告人に対し,当該医薬品の製造販売の差止め及びその廃棄を求める事案である。被上告人は,当該医薬品が上告人の特許の特許発明の技術的範囲に属しないなどと主張しており,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法の記載がある場合における特許発明の技術的範囲の確定の在り方が争われている。
2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)本件特許
 上告人は,発明の名称を「プラバスタチンラクトン及びエピプラバスタチンを実質的に含まないプラバスタチンナトリウム,並びにそれを含む組成物」とする特許(特許第3737801号。請求項の数は9である。以下「本件特許」という。)に係る特許権を有している。
(2)本件発明
 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1(以下「本件特許請求の範囲」という。)の記載は,次のとおりである(以下,本件特許請求の範囲に係る発明を「本件発明」という。)。
「次の段階:
a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,
b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,
c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,
d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,
そして
e)プラバスタチンナトリウム単離すること,
 を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。」
(3)被上告人製品
ア 被上告人は,医薬品のプラバスタチンNa塩錠10mg「KH」(旧名称プラバスタチンNa塩錠10mg「メルク」。以下「被上告人製品」という。)の製造販売をしている。
イ 被上告人製品は,プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウムを含有しているが,その製造方法は,少なくとも本件特許請求の範囲に記載されている「a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成」することを含むものではない。
3 原審は,次のとおり判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。
(1)物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法の記載がある場合における当該発明の技術的範囲は、当該物をその構造又は特性により直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときでない限り,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して確定されるべきである。 
(2)本件発明には上記(1)の事情が存在するとはいえないから,本件発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物に限定して確定されるべきである。そして,被上告人製品の製造方法は,少なくとも本件特許請求の範囲に記載されている「a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成」することを含むものではないから,被上告人製品は,本件発明の技術的範囲に属しない。
4 しかしながら,原審の示した上記3(1)の基準は是認することができず,そうすると,それを前提とした上記3(2)の判断も是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)願書に添付した特許請求の範囲の記載は,これに基づいて,特許発明の技術的範囲が定められ(特許法70条1項),かつ,同法29条等所定の特許の要件について審査する前提となる特許出願に係る発明の要旨が認定される(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集第45巻3号123頁参照)という役割を有しているものである。そして,特許は,物の発明,方法の発明又は物を生産する方法の発明についてされるところ,特許が物の発明についてされている場合には,その特許権の効力は,当該物と構造,特性等が同一である物であれば,その製造方法にかかわらず及ぶこととなる。
 したがって,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である。
(2)ところで,特許法36条6項2号によれば,特許請求の範囲の記載は,「発明が明確であること」という要件に適合するものでなければならない。特許制度は,発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図ることを通じて,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものであるところ(特許法1条参照),同法36条6項2号が特許請求の範囲の記載において発明の明確性を要求しているのは,この目的を踏まえたものであると解することができる。この観点からみると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物に及ぶものとして特許発明の技術的範囲を確定するとするならば,これにより,第三者の利益が不当に害されることが生じかねず,問題がある。すなわち,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において,その製造方法が記載されていると,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか,又は物の発明であってもその特許発明の技術的範囲を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む者において,当該発明の内容を明確に理解することができず,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うことになり,適当ではない。
 他方,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲においては,通常,当該物についてその構造又は特性を明記して直接特定することになるが,その具体的内容,性質等によっては,出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである。そうすると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法を記載することを一切認めないとすべきではなく,上記のような事情がある場合には,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として特許発明の技術的範囲を確定しても,第三者の利益を不当に害することがないというべきである。
 以上によれば,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。
5 以上と異なり,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その特許発明の技術的範囲は,原則として,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して確定されるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本判決の示すところに従い,本件発明の技術的範囲を確定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官千葉勝美の補足意見,裁判官山本庸幸の意見がある。

 裁判官千葉勝美の補足意見は,次のとおりである。

 私は,いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム(以下,単に「PBPクレーム」という。)における特許請求の範囲の捉え方について,次のとおり,多数意見に付加して私見を述べておきたい。
1 まず,PBPクレームの解釈,処理の基本的な枠組みについては,次のように考える。
(1)平成16年の特許法の改正により同法104条の3が創設され,侵害訴訟において特許無効の抗弁を主張することが可能となり,これにより,同条に係る無効の抗弁の成否(当該発明の新規性・進歩性の有無)を判断する前提となる発明の要旨認定をする場面と,侵害訴訟における請求原因として特許発明の技術的範囲を確定する場面とが同一の訴訟手続において審理されることとなった。そうすると,両場面におけるPBPクレームの解釈,処理の基本的な枠組みが異なることは不合理であるから,これを統一的に捉えるべきであり,このことは我が国の特許法制上当然のことであって,多数意見は,この見解を前提に,両場面ともいわゆる物同一説により考えることにしているのである。
(2)ところで,米国においては,PBPクレームの解釈,処理については,プロセス記載部分は出願審査の場面では特に問題とせず,特許の範囲が不明確でない限り,物同一説で出願を認めているが,特許権侵害の有無の判断の際には,これがクレームを限定する要素として作用するものと捉えるか否かの問題があった。周知のとおり,連邦巡回区控訴裁判所は,かつて,これを否定するScripps Clinic&Research Foundation v.Genentech,Inc.,927 F.2d 1565(Fed.Cir.1991)事件判決と,これを肯定するAtlantic Thermoplastics Co.v.Faytex Corp.,970 F.2d 834(Fed.Cir.1992)事件判決とで相反する判断を示していたが,Abott Labs.v.Sandoz,Inc.,566 F.3d 1282(Fed.Cir.2009)事件の全員法廷(en banc)の判決において,後者の見解を採用するに至っており,PBPクレームの権利範囲については,クレーム記載の製造方法で製造された物に限定されるとの判断を示した。これは,侵害訴訟の場面では,PBPクレームの解釈について,記載された製法に限定されずに広く物同一説で考えるという見解は採用しないことを示したものである。同事件は,その後,米国連邦最高裁において,サーシオレイライが退けられて確定している。
(3)このように,米国では,PBPクレームの解釈,処理については,多数意見のいうような出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という。)を厳格に求めておらず,発明の要旨認定では物同一説によってはいるが,結局,侵害の有無の場面すなわち特許発明の技術的範囲の確定においては,特許請求の範囲に記載された製造方法に限定し,厳しく捉えるというものである。今回,当審としては,発明の要旨認定の場面と特許発明の技術的範囲に属するか否かを審理する場面とで共通の統一した判断枠組みを採用するため,米国の特許制度の運用とは異なる面が生ずることとなるといわざるを得ない。もっとも,米国での上記の運用は,侵害訴訟の場面になると,結局,PBPクレームは全てその範囲を製造方法に限定したものと認定がされることになり,物の発明についての特許としてPBPクレームという概念を認める意味が大きく減殺されることにもなり,いわゆるダブルスタンダードとなるので,この運用が続く限り,法制の異なる我が国や欧州各国との統一性を図ることはできないことになる。
 (なお,米国連邦最高裁は,2014年6月2日に判決したNautilus,Inc.v.Biosig Instruments,Inc.,134 S.Ct.2120(2014)事件判決において,特許請求の範囲の記載要件の一つである明確性要件について,クレーム解釈ができない場合又は解釈されたクレームが解決できないほど曖昧な場合にのみ不明確とすべきであるとした連邦巡回区控訴裁判所の判決について,クレームは,特許明細書及び出願経過に照らし,当業者に対し,合理的な確からしさにより発明の範囲を伝えることができないのであれば不明確とすべきであるとし,連邦巡回区控訴裁判所の判断は,明確性要件の果たす公示機能を損なうなどとしてこれを取消し,事件を差し戻しており,明確性の程度を厳しく要求する姿勢が見られる点が注目される。)
2 次に,現行の特許庁のPBPクレームについての審査基準については次のような点が指摘できる。
(1)特許庁の特許・実用新案審査基準(第〈1〉部第1章2.2.2.4(2),第〈2〉部第2章1.5.2(3))によれば,PBPクレームの審査基準は,現在も物同一説により審査が行われており,その概要は,次のようなものである。
 発明の対象となる物の構成を,製造方法とは無関係に,物性等(構造等)により直接的に特定することが,不可能,困難,あるいは何らかの意味で不適切(例えば,不可能でも困難でもないものの,理解しにくくなる度合が大きい場合など)であるという事情(以下「不可能・困難・不適切事情」という。)が存在するときは,その製造方法によって物自体を特定することができる。また,請求項中に製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合には,最終的に得られた生産物自体を意味しているものと解する。
 物同一説により新規性・進歩性の有無について審査することの前提として,請求項が,製造方法によって物を特定しようとする表現を含む場合,明確性(特許法36条6項2号)の審査においては,審査の際の上記不可能・困難・不適切事情の有無については出願人がその事情の存在を理由に出願していることから,改めてその存否について実質的な審査はほとんどせず,出願人が上記のような請求項による出願をするのであれば,特許庁は,その記載をもって不可能・困難・不適切事情があるものとして,PBPクレームとして物同一説により物自体の新規性・進歩性の有無を審査している。
(2)しかしながら,物の発明についての特許は,本来,出願に際しては,特許請求の範囲の記載において物自体の構造又は特性によって直接特定すべきところ,製造方法により特定することを認める範囲を広げ過ぎると,権利範囲が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物にまで及ぶこととなり,公平な競争を阻害し,多数意見が指摘するとおり第三者の利益を不当に害することになる。そのために,PBPクレームについては,例外的にこれを認めるものとし,PBPクレームを認めるべき事情があるか否かは,厳格に考える必要があり,出願審査も実質的にそれに対応してされるべきものであろう。
3 以上を踏まえ,PBPクレームを認める例外的事情の内容を検討する。
(1)今回の当審判断(多数意見)は,この事情につき,発明の対象となる物の特定が「不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するとき」としている。その内容については多数意見で触れているところであるが,ここでいう「不可能」とは,出願時に当業者において,発明対象となる物を,その構造又は特性(発明の新規性・進歩性の判断において他とは異なるものであることを示すものとして適切で意味のある特性をいう。)を解析し特定することが,主に技術的な観点から不可能な場合をいい,「およそ実際的でない」とは,出願時に当業者において,どちらかといえば技術的な観点というよりも,およそ特定する作業を行うことが採算的に実際的でない時間や費用が掛かり,そのような特定作業を要求することが,技術の急速な進展と国際規模での競争の激しい特許取得の場面においては余りにも酷であるとされる場合などを想定している。特に,後者については,必ずしも一義的でないため,実際上どのような場合がこれに当たるかは,結局,今後の裁判例の集積により方向性が明確にされていくことになろう。
(2)特許庁の現在の審査実務で採用されているとされている「不適切な場合」という基準は,余りにも価値判断的な要素が強く,内容が明確でないため範囲が広がり過ぎ,また,構造等でさほど困難なく特定できる場合であっても,単に発明の構成を理解しやすくするために製法を記載することまで認める余地を残すこととなり,いずれにしろ,PBPクレームの概念を認めた趣旨と齟齬しかねない面が生じ,妥当とはいえないところである。
 なお,発明の構成をより分かりやすくするためであれば,製造方法については,特許請求の範囲にではなく,「発明の詳細な説明」に記載することで足り,そうすべきである。
4 今後の特許実務と従前のPBPクレームの扱いは,次のようになろう。
(1)これまで,PBPクレームの出願時の審査においては,不可能・困難・不適切事情を緩く解してこの点の実質的な審査をしないまま出願を認めてきているが,今後は,審査の段階では,特許請求の範囲に製造方法が記載されている場合には,それがPBPクレームの出願である点を確認した上で,不可能・非実際的事情の有無については,出願人に主張・立証を促し,それが十分にされない場合には拒絶査定をすることになる。このような事態を避けたいのであれば,物を生産する方法の発明についての特許(特許法2条3項3号)としても出願しておくことで対応することとなろう。
(2)この点につき,原審である知財高裁大合議部の判決が示す基準によれば,特許庁の審査実務では物の発明の範囲を構造等で直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情(以下「不可能・困難事情」という。)の存否に関わりなく明確性要件違反とはならないことを前提とし,PBPクレームの解釈について,発明の要旨認定の場面でも特許発明の技術的範囲の確定の場面でも,原則として,不真正PBPクレームとして製法限定説によるが,不可能・困難事情が存在する真正PBPクレームの場合に限り,物同一説によるという言わば二分論を採用している。これは,特許法1条等の趣旨に照らし,その物の製造方法によって物を特定することも許され,同法36条6項2号にも違反しないとするものであり,同法の原則と特許庁の審査実務とを踏まえた現実的な対応を模索した苦心の見解であろう。
 しかしながら,この見解は,PBPクレームの解釈について物同一説を採用したと解される当審判例(最高裁平成9年(行ツ)第120号同年9月9日第三小法廷判決・公刊物未登載,最高裁平成9年(行ツ)第121号同年9月9日第三小法廷判決・公刊物未登載,最高裁平成10年(オ)第1579号同年11月10日第三小法廷判決・公刊物未登載)と齟齬する面があり,また,そもそも,当該PBPクレームがこの真正,不真正のどちらに当たるかは裁判所の見解が示されない限り,明確ではなく,真正か不真正かで特許請求の範囲は大きく異なることになり,出願人の意図と齟齬する事態が生じかねない。また,第三者にとっても,当該発明が真正か不真正かで権利の範囲が大きく異なるが,その点は明確ではなく,予測可能性を奪うおそれが生ずる。このことは,結局,特許の範囲が不明確で特定されていないことによるものであり,特許法36条5項,6項2号等に反する事態であるといわざるを得ない。更に,この見解に従うと,審査実務においても,真正か不真正かで特許発明の範囲等が異なるため,この点をしっかりと区別した上で特許出願を認める必要が生ずることとなり,その結果,審査は慎重にならざるを得ず,その負担が重くなり,審査の遅延を招くおそれも大きい。
(3)多数意見は,原審が提起することとなった上記の問題点を踏まえ,PBPクレームが認められる事情を本来の趣旨を踏まえて厳格に捉え,それに当たらず拒絶されるおそれがある場合には,物を生産する方法の特許として出願させるという実務を定着させる方向の後押しとなる解釈を示すものである。これは,特許出願の際の審査が,PBPクレームを物質特許として認めるための要件を実質的にも審査することになる点でこれまでとは変わることとなるが,出願人にとっては,従前も,構造等で特定できる場合(不可能・非実際的事情が存在しない場合)であるのに通常の物の特許ではなくPBPクレームであるとして出願することがどの程度広く行われてきたかは疑問もあり,また,本当に「不可能であるか,又はおよそ実際的でない」のであれば,この点は,出願人にとって主張立証することに大きな負担となることはないであろう(例えば,生命科学の分野で,新しい遺伝子操作によって作られた細胞等であれば,それを出願時において構造等で特定することに不可能・非実際的事情が存在しないとして拒絶されるとはいえないであろう。)。また,審査においても,出願人がこれを積極的かつ厳密に立証することは事柄の性質上限界があるので,これを厳格に要求することはできず,合理的な疑問がない限り,これを認める運用となる可能性が大きく,その意味では,さほど大きな懸念を抱かなくても済む可能性が大きい。
(4)次に,従前,出願審査の段階では原則として不可能・困難事情の存否を実際上チェックしないまま既に認められ登録されてきたPBPクレームについて,今後,無効審判請求や侵害訴訟の過程での特許無効の抗弁の提出がされることも予想される。しかし,出願時において不可能・非実際的事情の存在を明らかにできないのであれば(それは,構造等で特定できるのにそれをせず,安易に製法により特定したPBPクレームとして出願したということになる。),それが無効とされても止むを得ないところである。もっとも,この事態は,特許出願の審査が緩くPBPクレームを認めてきたことに起因するものであり,このことは出願人のみの責任ともいえないところであって,これを避けるためには,特許無効審判における訂正の請求(特許法134条の2)や訂正審判の請求(同法126条)等を活用することも考えられ,それらが現実にどのように処理されるかは今後に残された問題であろう。

 裁判官山本庸幸の意見は,次のとおりである。

 私は,本件を原審に差し戻すことに賛成するが,その理由は多数意見とは異なるものである。以下,その理由を述べる。
1 特許請求の範囲に何を記載するかは,平成6年の特許法改正の経緯に鑑みれば,基本的には特許出願人の自由な選択に委ねられていると解される。同改正前の特許法36条5項2号は,特許請求の範囲は「特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみ」を記載することとされていた。ところが工業所有権審議会は,その答申において「(1)作用的・方法的クレームの許容の必要性(中略)基本的に『物』の発明における『発明の構成に欠くことができない事項』は『物』で表現すべきものとされ,また,作用や方法は物の発明の構成に欠くことができない事項ではないと考えられているため,〔1〕請求項に記載された事項が単一の技術的手段からなる場合において,その技術的手段が機能的又は作用的に記載されている場合,〔2〕物の発明において,技術的手段が方法的に記載されている場合のような作用的,方法的記載は認められていない。しかし,情報関連技術(電子,通信,情報技術)等の発展に伴い,いわゆる技術のソフト化が進んだ結果,こうした分野における装置の発明については,構成に欠くことができない事項として装置の物理的な構造や具体的手段を記載するよりも,その装置の作用や動作方法などによって装置を定義する方が適切に発明を表現できる場合が多くなっている。(2)クレームの記載の尊重の必要性(中略)何をクレームするかということは出願人が自らの責任で決めるべきものであるから,クレーム記載の発明が発明の詳細な説明に容易に実施可能に記載されており,また新規性・進歩性等の特許要件を満たしていると判断される限り,審査官がクレームの範囲を変えるよう指示するということは不適当であり,(中略)しかし,現行法には『発明の構成に欠くことのできない事項のみ記載』との規定が存置されているために,上記のように作用的・方法的記載について拒絶理由が通知された場合,出願人は上位概念での記載(作用的・方法的記載)を,より限定された具体的手段での記載に変更せざるを得ないことがあるなど,結果としてクレームの限定を求めることになる場合がある。(以下略)」(平成6年9月答申23頁から24頁まで)として,何をクレームするかは出願人の責任で決めるべきものとした。このため,その趣旨を明らかにすべく,同条5項は全面的に改められ,「事項のみ」のうち,「のみ」が削除され,出願人が自らの意思で表現したクレームの記載を尊重するものとされた。この理は,いわゆる機能的クレームだけでなく,製造方法によって生産物を特定しようとするクレーム(いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム。以下,単に「PBPクレーム」という。)にも当然に当てはまるものである。ちなみにこの特許実務は,特許制度の国際調和の動向に沿い,また世界の主要特許庁の実務と基本的に相通ずるものであると理解している。
2 では,その世界にも通ずる特許実務とはどのようなものであるか,私の理解では,我が国の特許実務を基に説明すれば,次のようなものである。
 この改正の結果,出願人自らの判断で記載した特許請求の範囲に対して,出願人の意思にかかわらず,審査官がその発明を特定するために必要な事項の全てが記載されているかを審査することは適当でないため,それ以前のようにこの規定を根拠に拒絶理由等の対象にするようなことはされないような扱いになった。したがって現行の特許法体系の下では,特許請求の範囲に作用その他のいわゆる機能的クレームであろうと,PBPクレームであろうと,いかなる形のクレームの形式でもそれを記述して特許を受けようとする発明を特定することは出願人の自由である一方で,そのように特定された発明が特許法49条各号(拒絶理由)に該当すれば特許は成立せず,特許が成立した場合でも同法123条各号(無効理由)に該当すれば特許は無効となる。したがって,平成6年法改正の趣旨からすると,出願人自らがPBPクレームを選んだ以上,単に形式的にそれがPBPクレームであるか,又はそれがいかなる種類のPBPクレームであるかなどの言わば手続的事項を根拠にこれを不明確として拒絶・無効理由とすることには,極めて慎重な運用がなされてきているものと承知しているし,それは正しい法の解釈・運用であろうと考える。
 ところで特許庁の審査基準によれば,PBPクレームは,次の2つの場合に拒絶されることがあるものと承知している。 
 第1は,明確性の要件で,同法36条6項2号(同法49条4号及び同法123条4号において引用)違反とするものである(審査基準第〈1〉部第1章15頁〔2〕発明が不明確となる類型)。すなわち,(《1》)製造方法(出発物や製造工程等)が理解できない結果,その発明が不明確となる場合,(《2》)生産物の特徴(構造や性質等)が理解できない結果,その発明が不明確となる場合(具体的には,明細書中に,その製造方法によれば収率がよい,効率よく製造できる等の方法的特徴が記載されているだけの場合)である。それらは,物の発明が特定されているとはいえないからである。これら以外は,その発明が特定されているのであれば,審査官としてはこれをそのまま特許請求の範囲の記載として認めて,新規性・進歩性等の特許要件の判断を行うという運用であり,たとえそれがクレームの記載としては蛇足であっても同様である。これは世界的にも共通の運用であると承知している。
 第2は,新規性の要件で,同法29条1項3号違反とするものである(審査基準第〈2〉部第2章8頁)。この場合(その末尾が「物」で終わることから物の特許出願であることが明らかな出願中のPBPクレームで記載されている特許請求の範囲について),その記載は,最終的に得られた生産物自体を意味しているものと解する。したがって,請求項に記載された製造方法とは異なる方法によっても同一の生産物を製造でき,その生産物が公知である場合は,当該請求項に係る発明は新規性が否定される。
 すなわち,第1(《1》)により,他の形式のクレームと同様に,PBPクレームにおいても,その発明を特定するための事項が理解できないことでその発明が不明確となる場合には拒絶される。同じく(《2》)により,収率がよいとか,効率よく製造できるという方法的特徴しかなく,物の特徴が不明な発明(本来は方法の発明としてクレームされるべきものである)は,物の特許としては不明確であるから拒絶される。また,第2により,生産物自体が公知又は公知のものから容易に発明することができるために新規性・進歩性はないような場合も拒絶される。
 上記のように,特許請求の範囲の記載がいかに出願人の自由な記載に委ねられているといっても,明確性要件と新規性要件の必要かつ十分な適用によって,本来拒絶されるべきPBPクレームは審査において拒絶される。仮に誤って特許された場合には,上記と同じ基準によって審判において無効とされ,これは同法104条の3においても同様であるべきと考える。
3 ところが,この多数意見では,以上のような特許法の解釈及び特許実務の運用を根底から覆す結果となる。それが正しい方向であるとすれば特に異論はないが,私には決してそうとは思えない。すなわち多数意見(4(2))は,特許法1条の目的及び同法36条6項2号の規定から物の発明についてPBPクレームのある特許請求の範囲の記載は明確でなければならないとする。一般論としては,それは正しい。しかしながら,物の発明につき特許請求の範囲がPBPクレーム形式で記載されていないと,かえって明確でなくなる場合が多々ある。とりわけ新規性のある物の発明では,出願人がどのような方法で作った物であるかを記述すれば非常に分かりやすいのに,これを無理やりその物の構造や特性で記述しようとすると間違いなくそれは複雑な概念や用語で表現することにならざるを得ない。それでは,出願人としては無駄な時間や費用が掛かって出願する時期を失するおそれがあるだけでなく,そのような記述は審査官にとっても,また当業者にとってもかえって分かりにくいものとなり,それこそ明確性の要件に反するものになってしまうのではないだろうか。例えば生命科学の分野で新規性のある細胞に関する特許請求の範囲を,「いかなる細胞にどのような遺伝子をどうやって注入する方法により作成された細胞」としてPBPクレームで記述すれば当業者であれば極めて分かりやすい特許請求の範囲となるのに,これをその出来た細胞の構造や特性に基づいて記述しなければならないとなると,それなりの時間や費用や労力をかければ必ずしも不可能ではないのかもしれないが,そういう努力をしてやっと記述できた結果の当該細胞についての特許請求の範囲の記載は,およそ無味乾燥で誰にも分からない不得要領のものになることが多いのではないかと思われる。その結果,明確性の要件で拒絶等されてしまうことが容易に看取される。これでは,発明の保護及びその一般の利用との調和という特許法の理念からますます遠ざかる結果になると考える。
 この点,多数意見は,「出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである」として,一見極めて限定的ながらPBPクレームを認めようとしているかのごとくであるが,結局のところ「法36条6項2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解する」とする。しかしながらこれでは,ほとんどPBPクレームが認められる余地はないのではなかろうか。
 この点に関し思い起こされるのは,新しい遺伝子操作によって作られた幹細胞等について出願される最近の生命科学の分野における重要な発明である。このような発明を物の発明として出願するについては,その特許請求の範囲は,PBPクレームで記載されることが大半であろうと思われる。そうすると,上記の多数意見を基にすれば,出願人は,特許請求の範囲の記載に関し,PBPクレームであるがゆえに,それが拒絶又は無効理由となることを懸念して,まずは構造又は特性によりその物を直接特定できないかを考慮することとなろう。しかし,それが「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するとき」(以下「不可能非実際的基準」という。)という多数意見の基準に基づいて行う作業と立証は,決して容易なものではなく,むしろそのような作業や立証を考えること自体が現実的ではないように思えてくるが,絶対にできないという確証もない。他方でそのようなことに時間をとられていては,先願主義の下で世界の他の出願人との熾烈な競争に後れを取ってしまうので,特許出願が急がれる。そういうことで,構造や特性で当該物を表現できず,さりとてこれでよいという確証もないまま,PBPクレームの形式で出願に踏み切るものと思われる。そうすると次に,審査・審判段階で不可能非実際的基準が拒絶・無効理由になるかどうかが審査等されることになる。しかし,この不可能非実際的基準というものが,ともかく余りに曖昧で漠然とした掴みどころのないものであることから,私の見るところ,安定的かつ統一した運用・解釈は非常に難しいのではないかと考える。しかも,「不可能であるか,又はおよそ実際的でない」というのは,誰がどういう基準でいかに判定するかが全く明らかにされていない以上は,限りなく「不可能」と同義ではないかと考える。その結果,PBPクレームを含む特許請求の範囲がある物の特許出願のほとんどは,明確性の要件違反で拒絶されるのではないかと懸念している。これでは,いわゆる萎縮効果が働いて,我が国の特許出願から,本当に必要なPBPクレームまで駆逐されてしまい,発明の保護にはつながらないのではないだろうか。さらに問題は,これが既存の特許の無効理由になることから,これまで成立したPBPクレームで記述されている多数の特許についても,その無効を争う訴訟が頻発するのではないかと懸念している。その特許が成立したときには,不可能非実際的基準というものを意識する余地もなかったわけであるから,そのような訴訟では,こうした事情もよくよく考慮に入れるべきである。
4 もちろん,多数意見のいうように,第三者の利益が不当に害されることがないようにという観点も,発明の保護と並んで重要である。特許の本質は,この双方の視点のバランスを図ることにあるといってよい。しかしながら,多数意見のいう不可能非実際的基準では,発明の保護が全く図られないことにつながるおそれがあるというのが,私の最も懸念する点である。
 現行の特許実務において,その特許出願の特許請求の範囲の個々の請求項(クレーム)の記載が「・・・の方法」ではなく「・・・の物」で終わっている以上,PBPクレームで記述されているものであっても,それは物の特許としての保護を求めていることは明らかである。その上で,最終的に得られた生産物に新規性と進歩性が認められない場合すなわち公知の物である場合には拒絶されるわけであるから,これで第三者は新規の物に関する特許出願だけに注目すればよいことになるので,その注意する負担の程度は,かなり軽減される。つまり当業者が出願時の技術常識を考慮しても当該製造方法で製造された具体的な物を想定できない場合等には,新規性あるいは進歩性の判断の前提として扱えばよいものと考える。それを多数意見に従えば,不可能非実際的基準から外れるPBPクレームであるという理由で,これを明確性の要件違反として一律に拒絶・無効理由とするのは,特許法36条6項2号に関する従来の解釈の範囲からあまりに外れており,明らかに誤った解釈であると考える。
5 特許庁が行う発明の要旨認定と裁判所が行う特許発明の技術的範囲の確定とは,従来は別々にされていても訴訟としては別個であったことから,その結論がたとえ食い違ったとしても,違和感はさほどなかったことは事実であろうと思われる。ところが,平成16年特許法改正により104条の3が設けられたために,同一の訴訟中で無効の抗弁を主張できるようになったことで,同じクレーム解釈が別異にされるというのはさすがにおかしいと考えられるようになったことから,今やこういうダブルスタンダードは解消されつつある。これは正しい方向である。つまり特許性判断における「発明の要旨」と侵害の判断における「特許発明の技術的範囲」とは,クレーム解釈として本来は一致すべきものである。
 しかし,そうであるからといって,「特許発明の技術的範囲」を出発点としてこれに一致させるために「発明の要旨」認定の場面において,不可能非実際的基準に合致するかどうかという言わば手続的問題をもって,明確性の要件を発動して最初からそもそも特許取得を認めないという解釈は行過ぎである。平成6年特許法改正の趣旨からすれば,特許出願人が自ら選択したクレームの内容で発明の特定がされているのであれば,新規性・進歩性のある限り特許取得を認めるべきである。物の特許出願の特許請求の範囲に,PBPクレームが含まれているかどうかを問わない。これが,発明の要旨認定という局面である。
 その場合,PBPクレームについての特許法70条の解釈が問題とされることがある。これについては,物の発明(クレームの末尾が「物」で終わるもの)に係るクレーム中の製造方法は,当該製造方法に限定する趣旨ではなく,その製法によって作られる物自体を特定することを意味する記載ととらえるべきで,これもクレーム記載の文言を基準とする解釈そのものであると考える。つまり,物の発明においてあえて製造方法を記載することは,物自体についての発明として保護を求めているものと解し,そう解することをむしろ原則とすべきである。
 次に,PBPクレームについては,例外として,特許発明の技術的範囲の確定が,特許無効の抗弁における発明の要旨認定と同様には考えられない場合も存在することを認めるべきである。なぜなら,裁判所が行う侵害訴訟におけるクレームの解釈は,既に成立した特許権の法的保護範囲を確定するために行うものである。これに対して,特許庁が行う審査・審判におけるクレームの解釈は,審査ではその出願された発明に特許を与えるかどうか,審判ではその成立した特許が本来特許されるべきものであったかどうかをそれぞれ判断するために行うものである。そのように両者における解釈の目的が異なるわけであるから,その結果,両者の解釈が相違する場合があっても,それはやむを得ないものと考えられるからである。その意味で,PBPクレームは,侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の認定と発明の要旨認定とが異なることがある例外の一つであると解すべきである。このように解すると,一部のPBPクレームについては,権利行使の局面で,発明の要旨認定と比べて特許発明の技術的範囲の認定が狭くなるという結果もあり得るわけであるが,それもまた出願人がこうしたPBPクレームを選択した結果であり,やむを得ないところであるといわざるを得ない。したがって,事案によっては現在もそうされているように,必要に応じ,出願経緯禁反言の法理や意識的除外の法理など従来から確立しているクレーム解釈の法理により,PBPクレームで表現された物の特許についての特許発明の技術的範囲を実質的にその製法に限定されるように解釈することで,妥当な結論が導かれることになるものと考える。
6 ところで原審は,物の特許についてPBPクレームが記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その特許発明の技術的範囲は,原則として特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して確定されるべきものとしている。しかし,一般的に許容するといっても,これを区分けする不可能又は困難という基準が極めて曖昧であり,多数意見の不可能非実際的基準と全く同様の批判が当てはまる。これに加え,これが許容されない場合には特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して確定されるべきであるとするが,この点は多数意見のとおり,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合には,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるべきものと考える。
 上告人の本件特許に係る本件発明は,PBPクレームで表現された物(プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム)についてのものである。これに対し被上告人製品は,プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウムを含むものであることが認定されている。したがって,本件特許が無効でない限り,本件特許発明の技術的範囲に属するものであると考えられるものであるが,果たしてそのとおりか,また,その出願の経緯等からしてこれを限定的に解釈する可能性はないか等について審理を尽くさせるという意味で,本件を原審に差し戻すことに賛成するものである。
(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 山本庸幸)