覚せい剤取締法違反被告事件 最高裁判所第三小法廷平成25年(あ)第507号 平成25年11月19日判決

       主   文

原判決中「当審における未決勾留日数中80日を原判決の懲役刑に算入する。」との部分を破棄する。
その余の部分に対する本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人中川隆司の上告趣意のうち,判例違反をいう点について
 記録によれば,被告人は,第1審判決判示第1の覚せい剤の営利目的所持の事実と同一性のある事実につき,起訴前である平成23年10月13日,勾留状の執行を受け,その後第1,2審を通じて勾留を継続されていたものであるが,その間,第1審は,平成24年9月26日,被告人を懲役7年6月及び罰金250万円に処するなどとする判決を言い渡し,これに対し,被告人が同年10月10日控訴を申し立てたところ,原審は,平成25年2月27日,第1審判決中第1審における訴訟費用を被告人に負担させた部分を破棄し,その余の部分に関する控訴を棄却するとともに,原審における未決勾留日数中80日を第1審判決の懲役刑に算入する旨の判決を言い渡したことが認められる。そして,原判決が,上記のとおり,原審における未決勾留日数中80日を第1審判決の懲役刑に算入する旨を言い渡した点は,その理由中の記載に照らし,被告人の控訴申立後の未決勾留の日数の一部を,刑法21条により裁量によって算入した趣旨であることが明らかである。
 しかし,本件のように控訴審が被告人の控訴に基づいて第1審判決を破棄する場合には,控訴申立後の未決勾留日数は,刑訴法495条2項2号により,判決が確定して執行される際当然に全部本刑に通算されるべきものであって,控訴裁判所には,上記日数を本刑に通算するか否かの裁量権が委ねられておらず,刑法21条により判決においてその全部又は一部を本刑に算入する旨の言渡しをすべきでないことは,所論引用の当裁判所の判例(最高裁昭和25年(あ)第1477号同26年3月29日第一小法廷決定・刑集5巻4号722頁,最高裁昭和45年(あ)第1776号同46年4月15日第一小法廷判決・刑集25巻3号439頁)の示すところである。したがって,原判決中控訴審における未決勾留日数の一部を本刑に算入した部分は,上記判例に違反して刑法21条を適用したものであり,この点に関する論旨は理由がある。
 よって,刑訴法405条2号,410条1項本文,413条ただし書により、原判決中「当審における未決勾留日数中80日を原判決の懲役刑に算入する。」との部分を破棄し,その未決勾留日数を算入しないこととし,原判決中その余の部分に対する上告は,上告趣意として何ら主張がなく,したがって,その理由がないことに帰するから,同法414条,396条により棄却することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 
 検察官慶徳榮喜 公判出席
(裁判長裁判官 木内道祥 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 寺田逸郎 裁判官 大橋正春)