道路交通法違反被告事件 最高裁判所第二小法廷平成26年(さ)第1号 平成27年4月20日判決

       主   文

原略式命令を破棄する。
被告人は無罪。

       理   由

1 保土ケ谷簡易裁判所は,平成23年12月19日,「被告人は,平成23年1月23日午後3時57分頃,自転車道の設けられている神奈川県茅ヶ崎市矢畑1392付近道路において,原動機付自転車を運転して自転車道を通行した。」旨の事実を認定した上,道路交通法17条3項,119条1項2号の2,刑法66条,71条,68条4号,18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金6000円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,平成24年1月5日確定した。
 しかしながら,一件記録によると,本件道路の部分は,道路交通法2条1項3号の3に規定する自転車道に当たらず,神奈川県公安委員会の意思決定により,自転車専用との道路標示がなされ,その旨の道路標識が設置された,同法20条2項,2条1項7号,4条1項により自転車のみが通行することができる自転車専用通行帯であり,被告人が本件車両を運転して自転車道を通行したとはいえないから,前記略式命令の認定事実は罪とならなかったものといわなければならない。
 そうすると,原略式命令は,法令に違反し,かつ,被告人のため不利益であることが明らかである。
2 なお,所論は,本件公訴提起に先立ち被告人に対して行われた通告は,被告人が実際にした反則行為と種別を異にする反則行為についてなされたものであるから無効であって,本件公訴提起は,適法な通告に係る手続を経ないままなされたことになり,原略式命令の手続が法令に違反するとも主張している。
 しかし,反則行為に係る刑事裁判手続では,起訴状に記載された訴因を基準として訴訟条件である通告が具備されていれば手続を適法に進められるところ,本件においては,起訴状に記載された訴因は自転車道通行という通行区分違反であったのであり,被告人に対しては通行区分違反に係る通告がなされていたのであるから,通行区分違反の訴因に対応する訴訟条件に欠けるところはなく,原略式命令の手続自体に法令違反はないというべきである。
3 よって,前記2の所論は採用できないが,本件非常上告は、前記1のとおり理由があるから,刑訴法458条1号により原略式命令を破棄し,同法336条前段により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 
 検察官徳久正,同新堀敏彦 公判出席
(裁判長裁判官 山本庸幸 裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる)